N君

 

 首じっとり狂った空の暑さかな

春風社で仕事をし、
だんだんとデザインのほうに興味を持ち、
その方面の勉強をするために会社を辞めたN君が、
勤めていた会社を今年二月に辞し、
独立しました。
そのN君が昨日、あいさつに来てくれました。
ひと目見て、
たくましくなったなあと思いました。
なによりも、
古巣を忘れず、戻ってきてくれたことが嬉しく、
これからまたいっしょに仕事ができそうです。
N君が春風社で働くようになったそもそものきっかけは、
『新井奥邃著作集』でした。
新井奥邃に興味を持ったN君は、
卒論のテーマに奥邃を取り上げ、
それが中沢新一先生との縁を結んでくれました。
無理して会わずとも、
縁のある人には会うのだと感じた時間でした。

 半減期クジラ悲しも春の海

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先生とドア

 

 花びらの階段の隅に寄りてあり

先生とドアの関係について書くわけではありませんで、
本のタイトルの頭をつなぐとこうなります。
先生、いのちのことを教えて』と『ドアの映画史』。
なので、先生とドア。
いま、これが売れています。
『先生~』のほうは、
おそらく著者が、
講演の中で本に触れてくださった影響かと思われます。
銃殺刑の場面に立たされ、
九死に一生を得た引地先生だからこそ、
いのちについて、
圧倒的に深く迫力あるお話ができるのかもしれません。
『ドア~』のほうの売れ行き好調の理由が、
いまいち分かりません。
いい内容の本であることは間違いありませんが、
それで売れるほど甘くない。
タイトルが好かったのか、
装丁が好かったのか、
価格がお手ごろだったのか、
それらのコングロマリットなのか…。
先生とドア、
いずれも安くて美味しい、
もとい、安くて面白い本です。

写真は、まるちゃん提供。

 朧にて空にぽっかり祖母の顔

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過客

 

 蕎麦屋にてふるさとの味バッキャかな

日曜日、港の見える丘公園にあるゲーテ座にて、
ピアノの発表会がありました。
ひかりちゃんは、
「テルーの歌」「アメイジング・グレイス」の独唱、
りなちゃんは、
ブルグミュラー「貴婦人の乗馬」と「哀しい戦士」のピアノ演奏。
二年に一度の発表会で、
二年前も見に行きましたが、
ついこの間のように思えるのに、
いつものことながら、
月日の経つ速さに驚かされます。
帰りはひかりなちゃんご家族と焼き鳥屋へ。
クーちゃんとブーちゃんは、りなちゃんのお気に入り。
クーちゃんはクマ、ブーちゃんはブタ。
クーちゃんとブーちゃんは、
とても仲良しなので、
いつもけんかをしています。
休むときもいっしょのクーちゃんとブーちゃんでした。

 先生とつゝじ見ながら散歩かな

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静けさは

 

 行く春をスーちゃん一人上りけり

マンションの総会もありましたが、
それ以外は家にこもって本を読んでいました。
八犬士随一と自ら名乗っていた親兵衛ですが、
己の驕りに気づいてからの言動はなかなか魅力的です。
それにしても強い。力持ち。美少年。頭脳明晰。
結婚披露宴の新郎みたい。
うぬぼれないほうがおかしい。
それはともかく、
夕刻、疲れてきたので、
ビル・エバンスのCDを、音を小さくしてかけました。
音楽が鳴っていないときより静かと感じます。
ビル・エバンスだからかもしれません。
かつて赤羽でしこたま飲んで、
べろべろに酔ってタクシーに乗ったら、
ビル・エバンスがずっとかかっていたことがありました。
運転手はミュージシャンになりたくて、
秋田から出てきたとのこと。
そのときのことを、ふと思い出しました。

写真は、なるちゃん提供。

 修繕の総会乏し春が行く

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スーちゃん

 

 カッチ山朧に霞む卯月かな

キャンディーズのメンバーだった田中好子さんが亡くなりました。
五十五歳だそうです。
ヤフーのトピックスで知りました。
田中さんは、キャンディーズ時代、
スーちゃんの愛称で呼ばれていました。
ラン、スー、ミキの三人で、
初めは確かスーちゃんが、
真ん中で歌っていたように記憶しているのですが、
そのうちランちゃんが真ん中で歌うようになったような…。
真ん中で歌っていたからなのか、
わたしも当初スーちゃんがお気に入りでした。
でも高校生になり、ものごころがつき、
いや、
ものごころはとっくについていたはずですから、
思春期になって、とでもいうのでしょうか、
ランちゃんに好きの対象が移っていきました。
この移行を経験した男性は、
少なからずいたのじゃないでしょうか。
今朝一番でスーちゃんの訃報を知り、驚きました。
ご冥福をお祈りします。

写真は、まるちゃん提供。

 スーちゃんに憧れていた友もあり

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眠くなると

 

 春の朝句を考へて眠くなり

朝読む本、車中読む本、
夕飯後読む本を決めていますが、
夕飯後は、
一日の疲れも手伝ってか非常に眠くなります。
いつの間にかうとうとし、
同じ行を二度三度と読むことなどあたりまえ、
眠ってなるものかと眼をカッと開け、
歯噛みをし四度目の同じ行を上から読み始めると、
とんでもないイメージがパッと頭に浮かぶことがあります。
どんなのかといえば、
いきなり自分が樹の上で寝ているとか。
風が吹いてきて気持ちいいなあ。
お。向こうのお山から煙が出ているぞ。
かと思えば、
歯医者で奥歯を抜いてもらっていて、
抜いた瞬間にポコッと下からタケノコのように歯が生え、
医者が慌ててそれを抜くとまた生えてきて、
抜くと生え、抜くと生え、抜くと生え、
ルフトハンザ、
きりが無く生えてくるとか、
たとえばそんなシーン。
それはそれで面白いのですが、
そんなことまでして読み続ける必要があるのかと自問し、
無いと自答し床に就く今日この頃です。

写真は、まるちゃん提供。

 春うらら新聞広げ昼寝かな

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拡大鏡

 

 春霞吸ふて育つや山の菜

ちょうど齢五十を過ぎた頃から老眼の傾向が現れました。
同期の友人に尋ねると、
だいたい似たり寄ったりですから、
年相応というところでしょう。
メガネを外して近づければ、
細かい字も読めるのですが、いちいちそうするのは面倒臭い。
面倒と糞は臭いに決まっていますが、
実に面倒臭い。
だから家にも会社にも、
手の届くところに拡大鏡があり、
必要に応じて使います。
年々使う頻度がふえています。
先日、パソコン画面に拡大鏡をかざし、
「鬱」みたいな画数の多い字を見ていたら、
オカピーがつつつと寄ってきて、
コントロールキーを押しながら、
マウスの中央にあるローラーを回すと、
画面表示が大きくなることを教えてくれました。
それにより、
拡大鏡を使う頻度が大幅に減りました。

写真は、まるちゃん提供。

 我もゐて苗を放りし田植かな

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