活版印刷

 

 ゴトンゴトン冬の銀河を走りぬけ

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』のなかに、
ジョバンニが活字を拾う(文選)
アルバイトをする場面がありますが、
あの行程を経て文字を印刷することを活版印刷といいます。
活字を並べた版を印刷するから活版印刷。
猫のキャラクターが登場する同名の映画のなかでは、
ジョバンニが活字を拾っているとき、
ゴトン、ゴトン、ゴトンと
印刷機の音が低く鳴っていますが、
この音は、
ジョバンニが列車に乗ったときに聞こえてくる
車輪の音でもありました。
賢治は印刷所でアルバイトをしたことがありますから、
耳に残っていた印刷機の音が
銀河鉄道への想像力を飛翔させたのではないでしょうか。
紙に印刷された文字は、
宇宙へとひとを運んでもくれます。
今回、
自著『父のふるさと秋田往来』をつくるにあたり、
現代では極めて珍しくなった活版印刷の方式を採用しました。
担当してくださったのは内外文字印刷(小林敬社長)さんです。
一年かけてつくった本がようやく出来上り、
小林社長に届けて参りました。
涙を流して喜んでくださいました。
小林社長の言葉には、
活字への愛があふれています。

 嬰児籠の父のまなこに雪の降る

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