一日七ページ

 虫の音のバトンリレーに歩を進め

『大日本地名辞書』(全八巻、各巻平均九七八ページ!)
の著者・吉田東伍は、執筆に十三年間かかったそうですが、
日曜・祭日もなく三六五日、
一日七ページ書いたというから驚きです。
それも、小説のような創作ではありません。
調べて書くのですから想像を絶します。
吉田は、大正七年一月、五十三歳の若さでなくなりましたが、
築地本願寺で行われた追悼集会で演説した
市島春城(いちじましゅんじょう)は、
十三年間で出来たというのはむしろ驚くべきことで、
普通は一生涯かかる大事業であると、その偉業を称えたそうです。
そうすると、吉田の部屋には万巻の書があったのではと想像しますが、
そんなことはなく、大きな机が一個あっただけだとか。
とにかく本を読むスピードと記憶力が並大抵ではなく、
どんな分厚い難しい本でも十日と借りたことがなかったそうです。
人から蔵書について尋ねられると、
自分は図書館を利用するから、持つ必要がない…。
く~、恰好良すぎて、真似できません。
天才というのはいるものなのですね。

 脛の毛を撫でて海まで秋の風

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