陽水さんの涙

 どこまでも滑り落ちそな秋の宵

NHKでの四夜連続『LIFE 井上陽水 40年を語る』のうち、
初回の放送を見逃し、見たいと思っていたら、
さいわい武家屋敷が録っていましたので、
借りてさっそく見ました。
せっかくなので、初回分だけでなく、改めて全部を、
といっても一度には無理ですので、三回に分けて。
いろんなエピソードがあって面白かったのですが、
粒ぞろいの代表曲を聴きながら、
ふと、陽水さんの歌というのは、
時は二度と戻らない、そのときどきの風景も感動も
どうしようもなく一回だけのものなんだよ、
ということを、繰り返し繰り返し歌っているような気がしました。
「心もよう」「人生が二度あれば」「ジェラシー」「青空、ひとりきり」
「いつのまにか少女は」「なぜか上海」「少年時代」…
思いつくまま並べましたが、どの歌も
時間の不可逆性が底にながれているように思います。
番組の中で、誰かが言っていました。
陽水さんのサングラスは、涙を隠すためのものではないかと。
ある時ある場所でのライブ映像が映し出されましたが、
「人生が二度あれば」を熱唱する陽水さんの頬には、
確かに汗とは別の液体がこぼれているようでした。
三回目の放送は、故郷が一緒のリリー・フランキーさん
との対談をベースにしたものでしたが、
その中で、陽水さんがこんなエピソードを語っていました。
ライブが終わって、スタッフ数名と飲みに行ったとき、
一人一人に女の子が付くようなお店で、
店の女の子が、陽水さんを指差し「あ! あ! あ!」と言ったそうです。
陽水さんは、自分が井上陽水であることを気付かれたかと勘違いし、
「ま、ま、ま」と両手で制したそうです。
すると、その女の子が、さらに陽水さんを指差し、
「あなた、ゲイでしょ!」
そのエピソードを紹介しながら、陽水さん、げらげら笑っていました。
リリーさんも愉快そうに笑っています。
陽水さんがますます好きになりました。

 新涼やバルタン星人襲来す

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