イボ

 重き足数へし月や夏来たる
「あのー、左足の薬指に変な赤いモノができたんですけど、数年前からあるにはあったんですが、このごろ、と言っても突然というわけでもないんですが、少し大きくなった気がしまして、それでちょっと診ていただいたほうがいいのかなぁ、なんて思いましてですね…。えーと、これなんですけどね…」
「ああ、これ。イボですね」
「は。いぼ!? あのー、ただのイボですか」
「ええ。ただかどうかはわかりませんが、イボですね。液体窒素を塗っておきましょう。ちょっとピリッとしますが、水ぶくれになって、それから黒くなって、1週間もすればポロッととれますよ」
「はあ。ポロッとですか…」
「ポロッと。特に塗り薬も飲み薬も出しません。まあ、またなんかあったら来てください。お大事に」
「あ、どうも。ありがとうございました」
「はい。次のかたー」
 というわけで、人騒がせなイボ君でした。ま、わたしだけが騒いだわけですが…。

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傑作ポテチ!

 幼虫を突ついて片端のカブトかな
 新潟が生んだあの伝説的名菓「ふんわり名人」の時もそうでしたが、先ごろ近くのコンビニに入ったところ、何やら遠くでわたしを呼ぶ声がして、うろうろしていましたら、あるところでピタリと足が止まりました。
 目の前にそれは静かに佇んでいました。北海道リッチバター。むむ…。
 わたしは普段そんなにポテトチップスを食べません。しかし、この北海道リッチバターのたたずまいというか、袋からただよってくる芳醇なオーラというか、手に取らずにはおられませんでした。
 サイズがあるのかもしれませんが、そのコンビニで買ったのは105円と、それほど高くありません。
 店を出て、家に辿り着くまでの時間ももどかしく、歩きながら袋を破り、いけないものを覗き見るようにして袋から1枚取り出し、口中へ。
 な、な、な、な、な、なんだ、こ、この味は!!!
 今までのポテトチップスのイメージを根底からくつがえすような芳醇な味。もうやめられません。やめられない止まらないというのはこのことです。
 卒業証書を入れるような筒に入った高めのポテトチップスもありますが、あんなのは、卒業証書同様、大したことがないのに、立派な筒でもって権威づけしているに過ぎません。ところが、北海道リッチバターは違います。105円ですよ。リーズナブル・プライスじゃないですか。いよっ! 庶民の味方! いいぞ、ヤマヨシ! と、声を掛けたくなります。
 ちなみに下の写真は、わたしがプレゼントした北海道リッチバターを顔全体、からだ全体で味わって食している最中の、りなちゃんのお姉さんのひかりちゃん。

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家が建つ

 ひたすらに藪かき分けてカブトかな
 近所の古びた家が取り壊され、新しい家が建つそうです。大きなオームを飼っている家で、切なくママ〜、ママ〜と鳴くことは、ここにも書いたことがあります。そのオームも、どうやら今は引っ越しをしたらしく、家が新築になったらまた性懲りもなく、ママ〜、ママ〜と鳴くのかもしれません。
 子どもの頃は、家が建つというのは見ていて楽しかったですねぇ。大工さんが数人、鋸を使ったり鉋を使ったり、しているうちに、だんだん柱が立ち壁ができて家らしくなっていきました。他人の家なのに、わくわくします。
 今回、近所に建つ家は、○○ホームとか△△ハイムとかいう今風の建築会社が建てるらしく、大工さんがトンテンカンと悠長に建てるものではなさそうです。それでも、朝、坂道を下りながら、今日はどんな具合かなと、つい見てしまいます。

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乾いた世を

 麦藁帽我れを残して歩きけり
 村田英雄の次は、三波春夫でございます。
 以前、作家の森村誠一がNHKの番組で、三波春夫を紹介していました。野生の証明や悪魔の飽食の作家が三波春夫かぁ、と、興味を惹かれ、途中からでしたが見ました。
 森村さんが言うには、三波春夫というひとは、母の胎に着床したときから、人を喜ばせ、たのしませることを運命付けられた根っからのエンターティナーだった、そんなようなことだったと思います。
 どれだけ多くの人が三波春夫の歌謡浪曲で元気付けられ、勇気付けられたか。森村さんもその一人だというのです。
 休日、『三波春夫スーパーベストアルバム』を聴きました。いいですね〜。
 俵星玄蕃の名調子も快く、また、大好きだった祖母の兄が酔うと必ず歌った「チャンチキおけさ」も、しみじみいい歌だなあと聴き惚れてしまいます。
 月が〜わびしい〜 路地裏〜の〜 ♪
 土曜ゴミ青天白日蝿ぶんぶ

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村田英雄

 カブトムシ籠を破りて飛び立てり
 わが社の武家屋敷は若い頃、ニヤニヤしていている村田英雄がきらいだったそうです。わかります。何が可笑しいのか、なんかあの人、いつも笑っているんですね。でも、若い頃の村田英雄は笑ってばかりはいません。きりりとした表情の村田もいます。
 わたくし、『村田英雄ゴールデンベスト』というCDを持っているのですが、プリアンプをラックスマンからボルダーに換え、あまりの音の違いに驚いている昨今、さて、村田君はどうかしらと思い立ち、CDプレーヤーに乗っけてみました。
 素晴らしい!! さすがボルダー。いや、村田英雄。NHKホールで歌っていたのが、ラスベガスのショーで歌っているかのように聞こえてきます。ちゃんちゃちゃんちゃん、ちゃららららんらん、らららららららんらん、と「無法松の一生」が始まるや、胸がふわ〜と、ひらかれていくようです。
 村田英雄はニッポンのキング・オブ・ソウルです。顔付きも、どことなくオーティス・レディングに似てないこともないような…。顔のでかいところとか。
 ギチギチと夜を賑はふ甲かな

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天才ぶり発揮

 ほおたるやおまえひかるはなんのため
 ジャズを聴き始めて30年になります。最初に買ったレコードは、忘れもしません。Herbie Hancock V.S.O.P.
 雑誌ですごく褒められていたので、それに、ジャケットがカッコ良かったので、買いました。
 プレーヤーに乗せました。さて、ジャズってのはどんな音楽かいな。舌舐めずりして待ちました。聞こえてきたのは、プワ〜、ピヤ〜、ドコドコドコドコドン、ピャ〜、ジャ〜ン、バシッ!、プワ〜、っと、なんぼ聴いても、おんなじです。お化けが出る前の効果音みたいな音が延々つづきます。
 まいりました。おらには、おらみたいな田舎モンには、ジャズみてーな高級音楽はわがんねえ。そかそか。そういうことか。三橋美智也でも聴いてっぺ。まぁ、奈落の底へ突き落とされたような、そんな気分だったわけです。
 あれから30年。く〜。聞くも涙、語るも涙。ず〜っとジャズ(ばかりではありませんが)を聴いてきて、今ならわかります。Herbie Hancock V.S.O.P.も肩肘張らずに、無理なく、音楽として楽しめるようになりました。30年ですよ30年!
 前置きが長くなりました。(わたしの話、このごろ前置きが長い。自分でもわかってはいます)天才りなちゃんのことです。
 先日遊びに来たことは昨日もここに書きましたが、写真にあるようにカラコロツリーで遊んでいる時でした。
「ねぇねぇ、みうらさん(語尾がちょっと上がります)。いまかかっている曲は?」「ん!?」「ほら。このピアノ」「ああ、これね。キース・ジャレットのケルン・コンサート」「メモしておかなくちゃ」と、りなちゃん、可愛いショルダーバッグからこれまた可愛いメモ帳を取り出して、キース・ジャレットとメモしています。
 小学1年生がキース・ジャレットの「ケルン・コンサート」に反応するかね。反応するんですね。まいりました。おら30年も聴いてきてやっとこのごろ…。いや、泣き言は言うまい。りなちゃんはりなちゃん。おいらはおいら。
 りなちゃんに言わせると、ジャズの音というのは跳ねるんだそうです。とほほ…
 あたま掻き梅雨までしぼる痒さかな

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見えるかな

 花火咲き聞こえしまでの祭りかな
 先日、りなちゃん一家が遊びに来ました。おねえさんのひかりちゃんとりなちゃんは、カラコロツリーに夢中です。「みうらさんもいっしょにやろうよ」「おれはいいよ」「おとなだね」「……」
 それから、「この写真はだれ?」「おじいちゃんとおばあちゃん」「ふーん。もういないの」「いない。きっと天上から見てるよ。りなちゃんと遊んでたのしそうだね、って見てるさ」「そうかな」りなちゃんは写真立て横の電気スタンドのスイッチを入れ、顔を上に向けてジッとしています。ん!? 数秒後、「これで見えたかな」。あ、そういうこと。
 花火終え火薬の名残り家路かな
 花火終え家路無口になりにけり

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