出会いと別れ

 

・思い出も遠く淡くの桜かな

 

いきなりですが、
日本人は昔から出会いと別れを、
いや、
日本人だけでなく、
ひとは、
といったらいいでしょうか、
詠んできました。
出会いのよろこびと別れの悲しみの感懐をもつことが
リトマス試験紙になり、
すぐれた詩のよさに触れることも
またよろこばしく、
文章はまさに千古の事です。
千古とは、
過去にさかのぼっての遥かな時間
と思っていましたが、
吉川幸次郎の本を読んでいたら、
未来に向かっての遥かな時間も「古」で表し、
したがって、
千古は未来永劫、
永遠ということにもなる
ということですから、
これからも、
出会いと別れの歌は無数に詠まれていくでしょう。
春は好きな季節ではありますが、
どうも感傷的な気分になっていけません。

 

・天気予報外れて嬉し春の宵  野衾

 

靴のちがい

 

・うぐいすや谷に湧き出る水を誉む

二週つづけて鎌倉天園ハイキングコースを歩きました。
保土ヶ谷-北鎌倉間は電車ですが、
家について歩数を確認すると約二万歩。
先々週はレッドウィングの赤い靴。
先週はティンバーランドの茶色い靴。
いずれも
ふだん履きの好きな靴ですが、
ふだん会社との行き帰りでは七~八千歩ほどで、
ちがいをあまり意識しません。
しかし、
二万歩、
それも山を歩くとなると、
ちがいはおのずとあるようで、
同じ距離なのに、
長く感じたり短く感じたり。
桜はやっと二分咲きから三分咲き。
鎌倉は、
今週末がピークでしょうか。

・鮨店の大将身を退く三月尽  野衾

ネット売り上げ

 

・宣長のこころもゆかし桜かな

春風社のインターネット上の売り上げが、
前年比三十数パーセント増であることが分かりました。
つくっている本の多くが学術書である
ことを考えれば、
うなずける数字です。
振り返ってみればわたし自身、
街の本屋に立ち寄るのは、
隔週で通う鍼灸院の行き帰りのみとなりました。
必要な本、読みたい本はほとんどネット書店で購入します。
いつの頃からか、
どこの本屋に行っても臭みがなくなり、
ツルンとして面白くない。
個性もなければ毒もない。
問題のひとつは返品制度です。
売れなければ返せばいい…。
売れなければ返せばいい
と思って仕入れる商品の棚が
魅力的なはずがない、
というのは極論ですが、
著名な書き手の名前を書店員が読めなかったり、
簡単な漢字の書名を読めなかったりするのも、
もとを正せば、
問屋から送られてくるものをきれいに並べておき、
売れなければ返せばいい式が
現在の状況を生んでいる
といっても過言ではないでしょう。
どの本屋も、
売れなくても返せない
となったら、
おのずと仕入れに気合が入り、
必死に売ろうとするのではないでしょうか。
そのために、
商品知識を得ようと
出版社に問い合わせをして来る
ようになったら面白いし、
街場の本屋が変る気がします。

・遠方より春風駘蕩友ふたり  野衾

編集価値

 

・思い出を誘ひ寂しも桜かな

昼、
会社近くのマイ・カフェへ行き、
カウンターに向かい腰掛けていると、
グラスの水を持ってきたマスターが
「この雑誌、インターネットみたいで面白いですよ」
ん!
インターネットみたい…?
ランチ定食を待つ間、
示された雑誌をぱらぱらめくって見ているうちに、
マスターの言った意味が分かる気が。
どのページも、
ネット上のページをそのままもってきて印刷したみたい。
へ~。
なんとなく新鮮。
で、
ぱらぱらと。
でも、
じっくり読みたくなる風ではなく。
従来型の編集でない編集がコンセプトなのかもしれません。
一時のものの感じがし、
雑誌を閉じました。
このごろは、
仕込みの時をあまり経ずに目に触れ
耳に触れるモノ・ヒト
が多くなった気がします。
素人全盛。
一時の流行と思いたい。
マルクスを読んできたわたしとしては、
編集価値説を採りたい気分。

・春の夢哀しみの痕濡れてをり  野衾

昭和は遠く

 

・寅さんの啖呵弾ける桜かな

途中で寝てしまいましたが、
テレビで昭和を懐かしむ番組をやっていたので、
仕事疲れから、
しばらく呆けて見てました。
思うに、
このごろこの手の番組が多くなった気がします。
いろいろグッズが紹介されていたなかに、
腕時計のバンドに付ける
アルミのカレンダーというのが登場。
呆けた頭に血が巡り、
つい、
あああっ、
あった、あった、あったー!!
って叫んでました。
わたしも付けてましたもの。
アレ、
付き合いのあるメーカーから
サービス品としてもらうことが多かった。
あったあった。
便利ではあったけど、
思い起こせばダサくもあり。
いまふつうに使っているモノも、
あと二十年ぐらい経てば、
え~~~っ、なにソレ!?
ってなるんでしょう。
ケータイもスマホもその類かも。

・陸を夢見蝌蚪ら頭を沈めをり  野衾

二日連続

 

・鶯や来鳴き姿を隠しをり

家人の妹と娘ふたりが遊びに来、
初日は江の島散策、
二日目は、
建長寺から入って天園ハイキングコースを。
いやあ、
歩いた歩いた。
初日一万七千歩。
二日目約二万歩。
とくに江の島は、
立錐の余地無きほどの混雑ぶり。
「肌寒いし、曇り空だし、まだそんなにひとが出ていないじゃないの」
と勝手な想像をしながらでかけたところ、
みなさん、
同じような想像をしていたのか、
こんなに混んだ江の島は初めてだ~!!
といった感じ。
ところで、
北鎌倉駅を出、
ほんの少し横浜方面へ戻ると、
「うすかわ饅頭の儀平」というお店があります。
白い幟が数本、
ホームからも電車からも見えます。
清潔できれいなお店。
コーヒーセットもあり、
美味しかったあ!
調べたら、
2014年秋オープンといいますから、
割と最近のこと。
本店は、
本州最南端、
和歌山県の串本だとか。
北鎌倉店は支店。
近くにいいお店ができました。
休日、
儀平さんで
コーヒーとうすかわ饅頭をいただいて帰る、
それもいいなと。

・頼まれもせぬに開花を宣言す  野衾

小村井

 

・世は世とて春一刻の香を焚く

写真集の表紙、表紙カバーの印刷立ち会いのため、
東武亀戸線小村井駅へ。
小村井と書いて
「おむらい」
初めて降りました。
酢を入れるとオムライス、
てか。
昭和レトロな匂いぷんぷんで、
いやあ、
こころ晴れ晴れ。
天気もいいし。
待ち合わせ時刻より20分早く着いたので、
駅の周辺をぷらぷらと。
踏み切りの角にある交番のおまわりさんがこちらを見ています。
かまわず、
ぷらぷらぷらぷら。
ぷらぷら。
びっくりそば。
「当店は、本年一月三十一日をもって閉店と致します。
長らくのご愛顧ありがとうございました。  店主」
の貼り紙。
どれだけつづいたのでしょう。
メニューの看板は張り出されたまま。
かけそば二六〇円は安い!
と。
また、
ぷらぷらぷらぷら。
駅のほうへもどって。
おまわりさんと目が合った。
かまうもんか。
ん。
ラメ入り黒いストッキングの姐さん。
カンカンカンカンカンカン…。
間に合うか間に合わないか間に合うか、間に合うか、間…、
間に合った!
「おはようございます」
「あ。お、はようございます」
装丁家の桂川さんでした。

・妖しくて鼻が眼となる春の宵  野衾