色とにおい

 

ドリトル先生と暮らす動物たちは、
どの動物も個性派ぞろいですが、
図書室の館長をつとめるのは白ネズミ。
白ネズミは膨大にある本のなかから、
書名によらずに目的の本を探し当てるのです。
どういうふうにしてか。

 

このネズミは、それには敏感な嗅覚が大いに役立ったのだと話してくれました。
背表紙に書いてある文字だけでは本の区別がつかないときも、
その色とか、においのぐあいなどで、
見分けたり嗅ぎわけたりすることもありました。
(ヒュー・ロフティング/井伏鱒二[訳]
『ドリトル先生と秘密の湖』p.57、岩波書店、1961年)

 

わたしが読んでいるのは1969年、第14刷りのもので、
色が褪せ、古くなった紙のにおいがほのかにし、
それもあってか、
嗅覚の発達した白ネズミが
色とにおいで本を識別するということが
妙に納得できました。

 

・細りゆく父と母との五月かな  野衾