詩を読むには

 

クリスチャン・ボバンの
『老いのかたち 澄みわたる生の輝き』(中央公論事業出版、2019)
を読みました。
翻訳は戸部松実さん。
そのなかに次のような言葉がありました。

 

わたしは友の手からその詩を受け取りました。
小説を読むなら二、三時間で足ります。
でも詩を読むには一生かかるのです。(p.74)

 

じぶんの好きな詩は、好きな詩の言葉は、
なんどでもそこに帰り、
それを読むことでこころが落ち着き励まされます。
いったん離れても、
そこにその詩があると知っているので
ひつようがあればまたそこに帰っていきます。
ふるさとみたいだけど、
ふるさととはちがいます。
詩は、
人生の途中で知ったものですから。
しかし、とも思います。
人生の途中で知ったけれど、
ふるさとよりも古いふるさとで、
読むたびに新しくなるふしぎな土地。
そんな詩を、詩の言葉を
思い出させてくれる本でした。

 

・風薫る光と色を吸ふて吐く  野衾