夢のはなし

 

しごとの打ち合わせというのでもなく
五木さんの自宅を訪問。
くつろいだ雰囲気のなかでわたしは、
若いときから五木さんのファンであることを本人に告げています。
五木さんが
「何が好きですか」とききますから、
正直に、
「はい。『戒厳令の夜』が好きです。『風の王国』も」
五木さんの表情がほんの少し
けわしくなったように見えます。
「にんげんにとって自由が
たとえば酸素のようなものであることを教えられた気がします。
『戒厳令の夜』の始まりのシーンは忘れられません…」
「ほかには」と五木さん。
わたしは思いつくままに好きな作品名を
つぎつぎに挙げていきます。
さらにくつろいだ雰囲気になり、
五木さんの奥さん、近所のご夫婦まで加わり、
ゆかいな晩餐会になりました。
近所のだんなさん、つと立ち上がり、
歌を歌いはじめます。
その声が灰田勝彦に似ているので
そのことを五木さんに告げると、
「そうかなあ」
と、いぶかしげな五木さん。
気持ちよさそうに歌っているひとの声はますます灰田勝彦に似ていきます。
五木さんもなっとくの様子。
と、
やおら五木さん立ち上がり、
歌に合わせて踊り始めました。
ゆるゆるくねくねデタラメなように見えながら
リズムただしい阿波踊り風。
なんとも楽しそう。
わたしもつられて踊り出しそう。
いや、
酒も入っていないのにいいのかな、
なんて。
夜はいっそう更けていきます。

以上、夢に五木さんが出てきたはなしでした。

 

・たらの芽の勿体なさよ美味しさよ  野衾