残暑

 

なかなか涼しくなりません。
二十五、六度になるのはいつの日か。
とは言い条、
数日来、
蟬の声から秋の虫たちの声に代わっています。
自宅が保土ヶ谷の山の上なので、
夕刻、
藪の辺りから
すずしげな声が聞こえてきます。
体感温度はまだまだですが、
せめて聴覚だけでも秋を感じていたいものです。

 

・鍼灸院痛さ和らぐ秋となる  野衾

 

鎌鼬!?

 

二週間ほどまえでしょうか。
テレビを見ながら夕飯を食べ終わるころ、
口中の奥に違和感を感じ指を入れさわってみると、
舌の横が鋭く切れており、
血が出ているのでした。
ギョギョギョ、
いそいで台所へ向かい、とりあえず口中のものを吐き出し、
なんどもうがいをしました。
食べたものの中になにが入っていたのだろう?
ガラス片? 石? はたまた?
考えても一向に見当がつきません。
痛みはさほどでなく、
血も止まりましたから大事には至りませんでしたが、
小事とはいえ、
不思議は不思議として未解決のまま
忘れかけておりました。
三日前でしょうか。
はたと思い当たることがありました。
今夏、
この異常な暑さのため夏風邪をひいたのか、
ノドと気管支がやられ、
ひどくはならないものの、
ながく不快感がつづいていましたので、
しばしば飴を舐めていました。
三日前、好きなニッキ味の飴を舐めていたときのこと、
薄くなった飴の端が鋭い刃のようになっているのに気が付きました。
はは~。
これだ!
薄くなった飴の端でスッと舌が切れ、
すぐには気づかずに、
そのまま食事をして、
食事が終えるころになって違和感を覚えた、
おそらくそんなことだったのでしょう。
飴にも注意が必要なことが分かった次第です。

 

・馬の眼や風鈴の音の揺れてをり  野衾

 

元禄七年

 

加藤楸邨『芭蕉全句』は、
松尾芭蕉の俳句を制作年順にならべ、
それに
実作者でもある加藤がていねいに評釈を加えたもので、
短期間ではもったいなく、
少しずつ楽しく読んできましたが、
いよいよ最後の年になりました。
元禄七年。
西暦では1694年。
芭蕉先生、生まれは1644年ですから、
50歳で亡くなったことになります。
早いか遅いか。
それはともかく、
芭蕉は晩年、軽みを目指したとされており、
たしかに
シンプルで軽みのある、
それでいて口に上せてみると
味わいぶかい句が多くなっているようです。
たとえば
「梅が香にのつと日の出る山路かな」
も元禄七年の作。
『芭蕉全句』は、
はじめ四六判上製函入り上下二巻で上梓され、
その後ちくま学芸文庫に入り、上中下三分冊で刊行されました。
いまはいずれも絶版のようですが、
古本では入手可能です。

 

・耳鳴りを秋のひびきと聴いてゐる  野衾