訊いてみた

 

わたしの家は保土ヶ谷の山の上にあり、
東側は崖っぷち。
手すりが施されていて危なくはないのですが、
高所恐怖の身としてはビビリます。
手すりの外の淵は
狭いところだと三十センチほど、
泥棒でも
そこを歩いて逃げろと言われたら
ビビルでしょう。
なのに、
毎日のようにやって来る野良猫
がおり、
わたしの部屋の前でかならずこちらを見、
いち、にー、さん、
それからプイっと何食わぬ顔で
崖っぷちをものともせず難なく歩いていきます。
怖くはないのか?
どうして平地を歩くように歩けるのか?
そこを歩かなくても
歩くところはあるでしょうに?
いろいろ訊いてみましたが、
答えはなく。
白と黒のぶちの猫。

 

・秋澄みてガネーシャの鼻上向きぬ  野衾

 

鍼灸の威力

 

NHK「東洋医学 ホントのチカラ ~科学で迫る 鍼灸・漢方薬・ヨガ~」
の番組を見ました。
夜7時半から10時までという長丁場で、
早寝早起きのわたしは
あとのほうを断念。
このごろは、
大学病院でも
医療に鍼灸を取り入れているところが多くなってきている
とかで、
西洋一辺倒だった医療従事者が
遅まきながら
東洋医学に注目し始めたということでしょうか。
番組を見ていていちばん驚いたのは、
逆子が鍼と灸の施術により
くるり回転、
元通りの位置に戻って、
通常の分娩で産まれたこと。
いやびっくり。
話には聞いたことがありましたが、
ホントだったんですねぇ。

 

・灯り消す早や明月の上りをり  野衾

 

稲刈り

 

きのうの午後三時ごろでしたか。
家の電話が鳴りました。
秋田からだと直感。
案の定、
はずんだ父の声が聞こえてきました。
「稲刈り終ったあ」
「お疲れさまでした」
「いやぁ、つかれだな。機械さ乗ってあるぐだげだども、つかれるつかれる」
「オロナミンC飲んでらが?」
「なんとなんと、二本も三本も飲んでら」
「そうが。あど、ゆっくり休め」
「んだな。まづ、終ってよがった」
後ろから安心しきった母の声も聞こえてきます。
八十七歳の田仕事無事終了。

 

・農夫來(らい)どつと逃げ飛ぶ稲雀  野衾

 

リヤカーの句

 

吉行和子・冨士眞奈美の
『おんなふたり奥の細道迷い道』をおもしろく読みました。
本の帯に
「抱腹絶倒な俳句人生論」
となっており、
興味津々。
抱腹も絶倒もしないけれど、
たしかに笑えます。
もうひとり岸田今日子を入れ三人大の仲良しだったわけですが、
岸田さんが先に亡くなり、
吉行さんと冨士さんのふたりが残されました。
長年の友だちですから、
肩の凝らないいわば普段着のままの会話が
録されており
読んでいてなんとも心地よい。
たとえば。
芭蕉の『奥の細道』について話しながら、
男の涙が話題となる箇所があります。
芭蕉の「塚も動け我(わが)泣(なく)声は秋の風」
に冨士さんが言及すると、
「すごいよね。「塚も動け」だもの、大げさよね」
と吉行さん。
さらに、
「男は一生で何回くらい泣くのかなあ」
それに対して冨士さんは、
「昔は親が死んだ時って言ってたけどね」
この展開、
仲のいい、しかも女同士ならでは
と思わせるではありませんか。
と、
読んでたのしく愉快な本ですが、
それぞれの詠んだ俳句も載っており、
そのなかに、
冨士さんの「汗のリヤカー北上撮す友のあり」
がありました。
東日本大震災の後、
石巻を訪ねた折につくった俳句のなかのひとつ。
「汗」「リヤカー」「北上」「撮」
といえば、
これはもう橋本さんでしょう。
そう、写真家の橋本照嵩さんです。
橋本さんは吉行さん冨士さんの句友でもありますから、
宜なるかな。
この本にぐっと近づき、
なかに入り込んだ気がしました。

 

・大きさを目で測りけり新秋刀魚  野衾

 

忘れ物

 

帰宅途中、虫の声が聞こえ、
秋を感じさせます。
きょうの午後は雨模様ですが、
気温はさほど上がらず
しのぎやすそう。
さてこの時期の気分として例年感じることですが、
たとえば忘れ物をしたときのような、
なにか大事なことを
し残したような、
会わなければならない人に
まだ会っていないような、
そんなような、
もの寂しい気分。
燃えるような夏を何とかやり過ごし、
ようやく深呼吸ができるようになったというのに、
これはどうしたことでしょう。
ほんとうに忘れているものがないか、
よくチェックしてみなければ。

 

・新涼や忘れ物せし心地する  野衾

 

残残暑

 

しぶとい!
いや、この暑さのことですがね。
いちにちの最高気温が三十度を切ってやれやれ
と思いきや、
まだしぶとく
三十度台にしがみついている感じ。
いい加減にしてくれよ。
横浜地方、
きょうの予想最高気温は二十五度。
ほんとかなぁ?

 

・笹竜胆風が色づく宿りかな  野衾

 

学術書を読む

 

ことし二月のことでしたが、
朝日新聞社主催のブックフェア「築地本マルシェ」において、
「学術書を読む――『専門』を超えた知を育む」
をテーマにした鼎談に
声をかけていただきました。
そのときの模様が
朝日新聞社のサイトにアップされましたので、
ご覧いただければ幸いです。
コチラ
対談、鼎談、講演の機会があるたび、
まえもって語りの準備をし、
レジュメをつくり、
本も数冊から
多いときは十数冊読んで臨みますが、
そのことがわたしにとりまして
とても勉強になります。
外の風に触れるうれしくありがたい機会です。

 

・稲刈りのにぎはひに来る雀かな  野衾

 

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