・夏雲や本の表紙に移したし

雲の詩といえば、
山村暮鳥の「雲」がある。

おうい雲よ/いういうと/馬鹿にのんきさうぢやないか

子どものころ、
テレビで「巨人の星」を見ていたら、
星飛雄馬の初恋の相手、
山の診療所に勤めている美奈さんが
夕空の雲を見上げ、
この詩を口ずさんだ。
とても印象的なシーンだった。
薄幸な星飛雄馬の初恋の相手に、
子どもながら
私も恋をしていたのでしょう。
あまやかだけど、
切ない。
雲と虫を見ていると、
時を忘れ、
歳を忘れる。
半ズボンを穿かなくなり
わたしは
大人の仲間入りをしたけれど、
雲を眺めて呆とするうち、
いつの間にか半ズボン姿になっている。
おうい雲よとよんでいる。

・夏雲を見上ぐ太郎となりにけり  野衾