分からないについて

 

・坂の上あつち向いてほいの烏かな

分からない本はおもしろい
分かる本は楽しい
分かりすぎる本はつまらない
分からなさをもとめても
ひとは本を読む
一行が目に止まる
分かったから
止まったのか
分からないから
止まったのか
分からない

聖書は
分からない本の最たるもの
凍るようなイエスの言葉
目が止まる
奥邃は
パウロが言ったから
信じたのでなく
イエスが言ったから
信じたのだ
聖書の分からなさの前にたたずみ
夢中になったまま
ほかの本が
どんどん落ちていってしまいそう
大事なことは
本に書いてはいない
それはそう
本には
分からないことが書いてある

・慈照寺のかをり燻りて寒深し  野衾

水を飲む

 

・初春や念仏唱ふ母の声

きのうの『ためしてガッテン』は、
風邪やインフルエンザに罹らぬ体をつくるには
がテーマ。
これは見なければと居ずまいを正し。
人間の
喉から気管支、肺にかけ
線毛細胞なるものが存在し、
それが一秒間に十五回せっせと働き
ウイルスを外へ追い出すか、
または、
胃まで送って溶かしてしまう。
面白いのは、
線毛細胞のあるところ二重の層があり、
上がネバネバ、
下がサラサラの状態であること。
水分が不足すると、
サラサラの層が薄くなって
線毛細胞の動きが鈍る。
サラサラ層を厚くし、
動きを活性化させるには水を飲むのが一番!
そうすると、
ウイルスが体内に入ってきても
線毛細胞の働きで
ウイルスを対外に排出し
風邪に罹らないというわけ。
ガッテンしていただけましたでしょうか。
というわけで、
テレビを見た方、
今日はさっそく
いつもより多量に水を飲むことでしょう。

・賀状止みそろそろ本気仕事かな  野衾

 

・彗星の尻尾の如く賀状来る

意識から
すっかり遠のいているようでいながら、
ひょいと夢にあらわれ、
眼が覚めて
ドキドキしたり
シュンとしたり
ジーンときたりすることがあります。
今朝がそうでした。
初夢とはちがいます。
あの頃。
家に帰れず、
家に帰らず、
カプセルホテル住いの日々。
服もネクタイも会社に置いていた。
靴下や果ては下着まで。
自分が
どこを歩いているのか
なにに向い、
どっちへ歩いているのか、
さっぱり分からなかった、
というのはウソで、
よく分かっていた。
雪が解けるように、
それが
やがて終ることも。
そんな生活に別れを告げ、
新しい生活が始まりました。
汚れた雪の下から
土が顔を出し、
バッケが淡い緑色を見せるように。
が、
今朝
不意に、
新雪に足を踏み入れるがごとく、
その当時を
彷彿させる夢に
汚魂の甘い味わいとともに
遭遇し、
暗いなか、
眼を瞬かせていました。

・新雪や吾の濁りを流し去れ  野衾

光瀾之観

 

・人知らず雪の園生の碧さかな

瀾は大波という意味もあるようですが、
さざなみの意もあり、
ここではこちら。
ひかりのさざなみを観る。
きのうは一日快晴で、
朝はとても清清しかった。
六時四十分頃から
谷を挟んで向こうの丘の端が明るくなり、
だんだんだんと明るくなり、
まだかまだか。
時計がちょうど七時をうつころ、
ゆっさゆっさ、
ついに朝日が顔を出した。
ひかりがあふれ。
じっと観ていると、
あ!
あ!
たしかに。
丘の端から同心円状に
ひかりのさざなみが揺れています。
ちらちらきゅるきゅるきゅる。
新井奥邃(あらい おうすい)の文章に
光瀾之観(こうらんのかん)
というのがありますが、
漢文で難しくはありますが、
同じ難しさでも、
不明の深さと味が違ってくるよう。
そのあとしばらく、
文字がちらちらし
字が読めなくなりました。
太陽をまともに観てはいけないようです。

・新雪や無音の音の鳴り止まず  野衾

箱根駅伝

 

・年賀状先に手書きを読みにけり

正月二日三日は、
テレビで箱根駅伝の中継を観る
のがこのところの倣い。
何年前になるでしょう。
一度だけ、
選手が実際に走るのを見たことがあります。
ぼんやり年を越し
下山(拙宅は山の上にあるため)したら、
歩道を埋め尽くす人、人、人で、
これは初夢でないかしらと
危ぶむぐらいでしたが、
群れなす人を割って前に出、
疾走していくまぶしい選手の姿を目に焼き付けた
ことがありました。
高校、大学と
陸上部に所属していましたから、
いろいろ思い出したり、
感情移入したりしながら
このごろはテレビ中継を楽しんでいます。
目頭が熱くなり、
目を大きく見開いて
水分を乾かさなければならない場面が何度もあります。
たすきを渡した選手が
今にも倒れそうになりながら、
駆け寄るチームメイトに身を預ける前に、
その前に、
今走ってきた道を振り返り
一礼する姿。
あれにどうも弱い。
沿道で応援してくれた方々、
さまざまに協力してくれた各方面のスタッフ、
両親、家族、友人、知人、
学生生活等々に対し、
万感の想いをこめ一礼する。
見ていて清清しい気持ちになります。
よーっし、
今年はいっちょ走ろうかな、
と、
一瞬だけですが思う。
ほんの一瞬だけ。
結論は、
走らずに歩こう!

弊社は本日より営業。
本年もよろしくお願い申し上げます。

・初夢や富士も茄子も現れず  野衾