ウサギとネズミ

 帰省の日雪だびょんと父笑ふ
 この「よもやま日記」かつては土曜日、日曜日も書いていた。
 出張の折、宿に使えるパソコンがないときは手書きしたものをFAXで会社に送り、編集長ナイトウにアップしてもらっていた。
 秋田に帰省した折は、弟の家まで出かけ、パソコンを借り、そこからアップした。
 そういう姿を見かねたのか、あるとき田舎に帰ったら、父が、「お前にプレゼントだ」というから、何だと思ったら、パソコンが置いてあった。うれしかった。そのパソコンを使い、実家で「よもやま日記」を数回書いた。
 ところが、怪我と病気をした後、土、日は書かなくなったので、父からのプレゼントは寝たままになっていた。
 保土ヶ谷の自宅で使っているパソコンが、編集長ナイトウに言わせると、人間の寿命でいえば200歳を超えるそうだから、完全に壊れる前に換えようと思い、この正月帰った折、父にそのことを話したら、使ってもらったほうが機械もうれしいはずだから、横浜へ持っていけ、と言う。それで、父に頼んで、宅急便で送ってもらうことにした。マウスだけは取り外して鞄に入れて持ち帰った。
 さて、長くなったが、ここまでが前段。
 宅急便で秋田からパソコンが届いた翌朝、父から電話があった。父との会話を修飾することなく記すと、
「おはよう」
「おはよう」
「パソコン、とどいだが?」
「ああ、とどいだとどいだ。どうも、ありがどう」
「うむ。それはよがった。とごろで、ウサギの耳って言うのが、あれはどうした?」
「はあ? ウサギの耳?」
「ウサギの耳だよ、ほら」
「ウサギの耳ってなんだよ」
「ウサギの耳みだいなの、あっぺした」
(わたしはここで、はたと思った。これは、父が何か誤解をしているな。最初、ダンボールの持つところの楕円形の穴のことを指しているのかとも思ったが、どうもそうではないらしい…。ピーン!と来た)
「ウサギの耳でなぐ、ネズミだよ父さん。ウサギの耳に似でないごともないけれど、あれ、マウスっていうんだ」
「ああ、それそれ、マウスマウス」
「マウスなら、取り外して鞄に入れて持って来たよ」
「んだべ。なんぼ探してもながったがら、おがすぃーなぁと思っていだのさ。ああ、良がった良がった」
 というわけで、今日は、マウスをウサギの耳と言い間違えたかわいい父のお話でした。
 ブリッコや男鹿半島を包み込む

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