映画化決定!

 凩や股中眼(まなこ)の土佐源氏
 今年最後のよもやまは、春風社から出した西村淳さんの『面白南極料理人』が映画化されることになったお知らせで締めくくりたいと思います。
 映画のタイトルは『南極料理人』、監督・沖田修一、主演・堺雅人。
 「極限の地での男たちの笑いと食文化の奥に、遠く離れた家族を思い、長期出張サラリーマンの悲哀を感じた」ことが映画化決定の理由だとか。
 原作者の西村さんは確かに家族思いの人情味溢れる方。今年『篤姫』の夫役で名を馳せた堺が西村さんの情愛の深さをどんな風に演じるか見物です。
 映画は来年8月公開予定。撮影は、北海道の網走などで来年1月から行われます。
 ATM冬が隠れて操作せり
*春風社は、明日(12/27)より来年1月4日までお休みをいただきます。よろしくお願いします。
 皆様、どうぞ良いお年をお迎えください。

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念賀状!?

 鈴の音や枯葉舞台の土佐源氏
 年賀状書きは一仕事で、賀状を送らないことにしている人の記事をネットで見ると、羨ましい気持ち半分、負け惜しみを含め改めて年賀状の意義を再確認すること半分で、よーしと気合いを入れ、葉書に向かう。
 この人に書くぞ、と決めたら、その人を思い浮かべ、その人に対しての一年の感謝の思いと来る年の幸をこころに念じ、うんうんと唸り、短い一言を搾り出す………って、これじゃあ、まるで念賀状だ。搾ったことばを葉書に刻んだら、おもむろに裏返して宛名を書く、という具合。重い。重すぎる!
 かるくかるく、さらっと行こうと方針を変え、昨年から、賀状を出そうと思う人の宛名を先に一気に書くことにした。武家屋敷がそうしていたのを真似たのだ。それを束ねて持ち歩いているうちに、そうだ、あの人にはこのことばを送ろうと、不意にひらめくことがある。搾ることばではないことば。
 宛名を先に書く。ただこれだけのことなのに、賀状を書くことに対するこころ構えというか、ハードルの高さが随分ちがう。
 木枯らしや菰舞い上がる土佐源氏

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ホタテの串焼き

 まぐわいの背なの枯葉の土佐源氏
 こんな夢を見た。
 仲間数人で旅行をしているらしかった。小柄で可愛いAさんと背の高い痩せぎすのBさんもいた。小早川先生もいる。小早川先生は、以前勤めていた学校の同僚で、体育の教師だった。誰もこばやかわせんせーと呼んでいたが、本当は、こはやがわなのだった。
 旅の途中の休憩時間のようだった。若いAさんとBさんが連れ立って出かけ、程なく魚介の串焼きを持って帰ってきた。皆で木のテーブルを囲み、まだ湯気の立っている串焼きを頬ばった。一個ずつではなんだか物足りなかった…。
 わたしは、「ちょっと買ってくる」と言って席を立った。AさんとBさんが戻ってくるまでの時間からみて、すぐ近くにそれと分かる店があるのだろうと思ったのに、なかなかそれらしい店が見つからない。時計を見ながら歩を速めた。だんだん背中が汗ばんできて、ケータイで訊こうと思ったら、ケータイを持たずに来てしまったことに気づいた……、と思ったら、小銭入れの中にケータイが入っていて、ほっとした。Aさんに掛けようと思ったが、ちょっと考えて、ためらわれ、武家屋敷に電話した。今の会社の同僚も何人か参加していた。
 武家屋敷に確認したら、ここを出発するのは八時だという。念のためわたしは、夜の八時か、と訊いた。夜の八時だという。安心し、それでもわたしは歩を緩めなかった…。
 賑やかな声が聞こえてきて、どうやら運動会の最中なのだった。運動着姿の男子に、運動会かと尋ねると、スポーツ大会ですと答えた。運動会とスポーツ大会ではどこが違うのかと訝ったけれど、それ以上は尋ねなかった。ただ、少年の性格の一端が分かったような気がした。
 柵を超え小走りに坂道へ向かうと、ちょうどリレーのランナーがやってきたので、わたしも走った。勝てそうな気がした。が、一緒に走ってみると、彼は見た目以上に脚が速く、とても勝ち目がないことはすぐに分かったから、わたしは、走るのをやめた。また元の道路脇に戻り、歩いて坂を上った。見たことのある風景だと思ったら、青葉山なのだった。学生時代をここで過ごし、三ヶ月前、Aさんを連れてここに来ていたことを思い出した。
 枯藁のコ嘗めし御方や土佐源氏

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図書館は便利!

 火葬場の煙り立ち消ゆ冬の月
 出版人でありながら、学術図書出版社の社長でありながら、いつも全国の図書館様のお世話になっているにもかかわらず、社員には、図書館へ行って借りてくればいいじゃないか、県立図書館だって市の中央図書館だって目と鼻の先にあるじゃないか、すぐに行って借りて来い!(そんな命令口調ではありませんが)なんて言っているのに、お恥ずかしい話、わたしは個人的にあまり図書館を利用したことがない。すまない。子供の時からそうだった。人から物を借りることを潔しとしない、なんとなく。とくべつの理由はない。ただなんとなく。借りたとなると、返すまで、気になって気になってしょうがないのだ。地下鉄の電車をどこからどんな風に入れたのか、気になって夜も寝られないという漫才ネタがあったが、まさにあんな感じ。
 先週、仕事上の必要があって、ジャック・プルーストの『フランス百科全書絵引』を横浜市の中央図書館に借りに行った。大型本で片手で持ち上がらないぐらいの重さ。館外貸し出しはしていないという。だろうなあ。その足で県立図書館へ。所蔵しているものの、やはりこちらも館外貸し出し禁止。ただ、係の女性が、神奈川県内の他の図書館を調べてくれ、館外貸し出しを許している館もあると教えてくれた。ここで手続きをするよりも、市の中央図書館に連絡したほうが届くのが早いと思いますよ…。
 社に戻り、市の中央図書館に電話をし、その旨伝え、他の館からの貸し出しを予約。
 翌日、電話して、入ったかどうかを確認したら、まだだという。また電話します、と言って切ろうとしたら、パソコンをお使いですかと訊かれたので、はい、使っています。それでしたら、こちらのホームページを開いてパスワードを登録されますと、予約本の入荷状況がパソコンでご確認できますが…。
 というわけで、さっそくパスワードを入力した。「ただいま準備中です」のメッセージが出た。なるほどねー。いちいち電話しなくても分かるわけか。
 一時間ほどして、再びホームページに入りパスワードを入力、予約状況を確かめると、「準備ができました」とメッセージが替わっている。ふーん。なるほど。便利なものだ。
 いそいそと中央図書館に出向き、件の本を借り出した。歩きながら考えた。そか。図書館がこんなに便利なら、しかも歩いて1、2分のところにあるのだから、利用しない手はない! よーし。こうなりゃ、家にある本をぜーーーーーんぶ売っぱらって、本はすべて図書館から借りることにしようかな。そうだそうだそうしよう。家も広くなるし、売ったお金でまたオーディオを買い替えられるし…。そうだそうだそうしようそうしようったらそうしよう。
 なんてね。こういう気分の変り方が、後先考えぬ単純な変り方が、わたしの一番いけないところ。分かってはいるのだが。
 ところで、図書館がこんなに便利だっちゅう(古!)ことは、県内の図書館の蔵書がこんなに便利に借り出せるということは、本は買わずに借りるもの、と考えるのもうなずける。出版社としては考え物だ。
 物言えば唇寒いぜバカ総理

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タグ

 黒髪や草原情歌二胡の冬
 木曜日の横浜気功教室がまた新たに始まりました。復習の者、新規の者、半半ぐらいでしょうか。
 先生は築基功の概略を説明し、動きのお手本を示します。シーンとなって、皆、先生の動きに見入っています。………………
 ん!? ん!? 先生のズボンの右尻のポケットからタグがぺろんとはみ出しています。あーらら。わたしは一番前の席にいましたので、教えて差し上げようかとも思ったのですが、室内、水を打ったような静けさで、また、先生の妙なる動きは息を呑むぐらいでしたから、声を発するのがはばかられました。先生がご自分で気づかれるかも知れないし…
 結局、わたしも他の誰もそのことを指摘せず、先生も気づくことなく、第一回横浜気功教室は無事終了しました。
 二胡を弾く指やしずくの氷柱かな

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総合82位!

 バカ総理我れは理事長癪の燗
 パナソニック教育財団が全国の国公立の幼稚園に『わしといたずらキルディーン』をプレゼントしたことを共同通信が記事にし、配信してくれた(日本経済新聞をはじめ、確認できだだけでも30紙! あり難し!!)おかげで、注文の電話が鳴り止まず、アマゾンでの最大瞬間風速、いや、売上総合ランキングが82位にまで急上昇。児童書では、な、なんと、ハリー・ポッターに次ぐ5位!(けさ開けたら9位。さすが、上位の入れ替わりは激しい)
 全国の幼稚園で、これからどんな風に読み聞かせられるのか、想像するだに愉しみです。

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クリスマスプレゼント!!

 食品偽装、年金、世界的金融危機など深刻でどれも解決困難な問題に覆われた感のある今年だが、パナソニック教育財団とパナソニック株式会社は、小社が今夏刊行した『わしといたずらキルディーン』を買い上げてくださり、全国に5100ある国公立の幼稚園にプレゼントした。
 『キルディーン』は、元はと言えば、皇室医務主管で日本学術会議会長の金澤一郎先生が小社にお問い合わせくださったことから始まった。
 金澤先生は子供の頃、『キルディーン』の旧訳『わし姫物語』を母親から読み聞かせられ、以後、思い出深い一冊となった。
 有識者16人で構成される「こころを育む総合フォーラム」(事務局:パナソニック教育財団)で、日本人のこころのありよう、とりわけ子供たちの心をいかに育むかが話し合われた際、金澤先生は『わし姫物語』を取り上げ、紹介し、復刊できないものかと考えられたようだ。
 『わし姫物語』は、精神分析で有名なフロイトを日本に最初に紹介した心理学者・大槻憲二が訳したものであり、昭和十七年に講談社から刊行された。
 金澤先生は、パソコンを開き「大槻憲二」をキーワードにして検索することを日課にしていたそうである。ある日、いつも通りにパソコンを開け「大槻憲二」で検索したら、大槻の孫にあたる長井那智子さんの『チップス先生の贈り物』(春風社)がヒットした…。これが金澤先生が小社に連絡をくださるまでの大まかな経緯である。
 以後も、原書がロンドンの古書店で見つかったこと、皇后美智子様から「よいご本を読ませていただきまして」の御言葉を頂戴したことなど、奇跡的なご縁を賜り、今夏発刊にこぎつけることができた。
 読んだ方々から、とくに子供たちからありがたい感想をいただいた。通信社に勤める知人は、自分の子供たちに何を読めとは決して口にしない主義だが、小学三年生の娘が『キルディーン』を読み、気に入って三度読んだという。おそらく娘が一冊丸ごと読んだというのはこの本が初めてのはずと知人は言った。
 出版人としてちょうど二十年が経過したこの時期、『キルディーン』の刊行によって意を決するところがあり、気を引き締めていたところ、期せずして、パナソニック教育財団から思わぬお申し越しをいただいた。小社創立十年目のご褒美であるとの喜びもさることながら、全国の国公立の幼稚園に贈呈してくださるというので、何重もの喜びとなった。
 金澤一郎少年がお母様から読み聞かせられた本が少年のこころに刻印されてから半世紀以上経って尚その灯は消えず、今全国の幼稚園の子供たちの元へ届くまでに、いかに多くの人のご縁をいただいたかを思わずにはいられない。また、金澤少年のお母様はどうして『わし姫物語』を少年に読み聞かせたのだろう。いくつか読み聞かせたうちの一冊だったのかもしれないが、お母様の我が子を思う情愛の深さが『わし姫物語』に乗り移り、少年のこころに響いたのかもしれない。読売新聞の永井記者は「奇跡の新訳!」として紹介記事を書いてくださった。
 この本が、母と子のきずなを深め、子供たちだけでなく、子を持つお母様たちが元気に生きていくよすがになれば、出版人としてこれに勝る喜びはない。

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