こまどり姉妹

 

・雨上がる学校の田に緑さす

「ソーラン渡り鳥」は、
かつてこまどり姉妹が歌ってヒットした曲。
きのうテレビを点けたら、
NHK歌謡コンサートで
石川さゆりと原田悠里が歌っていまして、
どんなかな
と思いながら見ていましたが、
ピンと来ませんでした。
二人ばらばら。
私が私がと自己主張しているようにも聴こえ。
してみると、
テレサ・テンが
いかにすばらしい歌い手であったかということを、
ほかの歌手が彼女の歌を歌うことによって
思い知らされたように、
こまどり姉妹の
あのなんともいえぬ柔らかさ、
しなやかさ、
円やかさ、
艶っぽさが偲ばれ、
「津軽の海を越えてきた」
という歌詞の
深さと広がりを改めて思い知らされた気がします。
こまどり姉妹は北海道出身。

・自動車の音に耳澄む夜半かな  野衾

青山椒

 

・ミズタタキ腹中の毒流しけり

ミズタタキをつくるのに、
山椒をつかわない家もあるようですが、
食べ慣れているせいか、
ミズタタキイコール青山椒という印象で、
唇や舌がびりびり痺れるぐらいがちょうどよく。
味もさることながら、
料理の下準備として、
青山椒をすり鉢で擂るとき、
擂り粉木でグチグチとつぶし、
ギチギチギチギチ擂っていくときの快感はまた格別。
エゴの塊を粉砕しているようでもあり。
それはともかく。
ミズがちょうど食べごろになる
ときを見計らっている
かのごとく、
青山椒の実が程よく育つ自然の微妙に驚きます。

・怒り漏る笊の中なる青山椒  野衾

 

ああ、こでらえね!

 

・ゴミ出しの朝の光の涼しかり

この季節の秋田の旬の味覚といえば、
ミズタタキ。
ミズは方言で、
学名はウワバミソウというそうですが、
それはともかく。
まず皮を剥き、
ミズの太く赤い部分を切り、
スーパーでもらった透明の袋に入れ擂り粉木で叩きます。
このとき、
ミズがしなしなと軟らかくなるまで、
時間をかけて叩くのがコツ。
強く叩きすぎると、
袋が破れるので要注意。
つぎに軟らかくなったミズを袋から出し、
まな板の上に載せ、
包丁の刃でなく峰をつかって叩きます。
じゅうぶんに叩いたら、
最後に、
包丁の刃で丁寧に細かく叩きます。
事ほど左様に、
叩いて叩いてなお叩く。
なので、
ミズタタタタキ。
いや、
ミズタタキ。
あとは、
擂り鉢で山椒をつぶし、
味噌と交ぜ、
そこに叩いたミズを入れて交ぜれば出来上がり。
炊き立ての熱いご飯にかけて食べれば、
ああ、こでらえね!
(たまらなく美味しい!)
タッパーに入れ冷蔵庫にしまってありますから、
きょうの夜も食べられます。
むふふふふ。

・ゴミ出しの早朝烏まだ鳴かず  野衾

怒禿衝天

 

・刻一刻風は夏から吹いてくる

喜怒哀楽が激しいせいか、
となりのとなりの会社まで聴こえるような大声で
怒鳴ることが
かつては間々ありました。
(竹内演劇研究所にいた頃、
師匠・竹内敏晴から
「君は声がデカイね」と褒められた)
が、
このごろは、
怒鳴りの間欠泉の威力が減衰し、
どうやら、
ミニ好々爺然となってしまったようです。
いや悪いことではありません。
まことに善哉善哉。
角がとれ、
円くなってきたのでしょうか。
怒髪衝天ということがありますが、
髪の毛が、
野ざらしの駐車場状態ゆえに、
怒りにまかせ
爆発が起きたならば、
怒髪衝天ならぬ
怒禿衝天となって、
頭蓋が直に天にぶつかり、
頭から血を噴き出すことになりかねない。
桑原桑原。

・夏の空砂漠の少年歌ひけり  野衾

おねえさん

 

・待ち待ちて色を変ぜず白紫陽花

そこに洋食店があることは知っていたのですが、
とくに理由はないのですが、
いや、あるか、
太宗庵の近くなので、
太宗庵の引力が強く、
真面目なわたしは他へは目もくれず、
太宗庵太宗庵と草木がなびくようになびいてゆくのでした。
先週の木曜日だったでしょうか。
通常なら太宗庵は営業しているはずなのに、
なにか理由あって休みでした。
ので、
さてどうしましょう。
きょろきょろ辺りを見回していたら、
あら、
洋食屋さんがあるじゃないの。
というわけで、
初めて入りました。
ハンバーグとかステーキとかを得意とするお店。
なのに、
わたしはメニューにあった
エビフライ定食に眼が奪われ、
エビフライを所望、
しようと思って通りがかりの女性に、
「おねえさん!」
「はい」
「エビフライ定食をください」
「はい。わかりました」
ただそれだけの会話でしたが、
おねえさん!は効いた。
その女性店員、
いきなり、
顔からフローラルブーケな香りが
ほわほわ~んと漂うほど、
すてきな笑顔に彩られました。
わたしよりは下でしょうが、
年齢的に、
世間相場としては
少なく見積もっても「おばさん」のはず。
なれど、
いや、だからこそ、
「おばさん」
とは呼ばれたくないのかもしれない。
絶対そうだ。
そうにちげーねー。
おねえさん!
おねえさん!
よし!
これからおばさんを見たら、
おねえさんと呼ぶことにしよう!
*
橋本照嵩『石巻かほく』紙上写真展
の二十回目が掲載されました。
コチラです。

・紫陽花やその色空と比べをり  野衾

初夏

 

・夏雲やだんだん近くなりにけり

梅雨入りしていますので、
梅雨入りらしく、
ときどき雨は降りますが、
今年はそんなに長くつづくことはなく、
晴間もけっこうありまして、
まあ、
いい季節です。
ぷらぷら歩いて
つらつら慮るに、
とりあえず
ぼちぼち健康で、
友がいて家族がいて仕事があり、
近所にひかりなまでいて、
何を不満に思うことがあるでしょう。
なんて。
止水。
そんな風に感じたのは、
昨日いらした
スピリチュアル・ケアご専門の先生が、
たぐい稀なる聞き上手で、
先生の話は
もちろん面白かったわけですが、
わたしは、
あんな風にしゃべったことが
果してこれまであったかしらん
と訝るほど、
興味関心の連鎖を断ち切らずに
話し
腹をすっかり空けた
せいだったかもしれません。
スピリチュアル・ケアか。
ともかく。
ああああああああ
と深呼吸したら、
両腕が
1メートルほど伸びました。

・夏草の青き匂ひや馬と化す  野衾

まったく

 

・ひとり立つ影青くして夏の雲

月曜日はやる気がでません
人と話したくありません
仕事をしたくありません
電話にでたくありません
飯も食いたくありません
雨が降っても
傘を差したくありません
本も読みたくありません
風呂だって
入りたくありません
あーとかうーとかおーとかと
呻くだけ
ただ
あのことを
あのことだけは
それだけで
済ませたい
まったく
まったく
空とか海とか人生で
まったく

・夏服の袖の端風に揺れてをり  野衾