細野晴臣さんのつくる音楽、書く本が好きで、聴いたり読んだりしてきましたが、
昨年十二月、
門間雄介さんという方が『細野晴臣と彼らの時代』
を上梓しました。
わたしは今年に入ってから購入しましたが、
三月十五日の時点で第三刷ですから、
けっこう売れているようです。
まだ読みはじめですが、
細野さんの音づくりについて合点がいく話が紹介されていました。
孫引きで恐縮ですが、引用します。
〈そこで気づいたのだ、自分がいいと思ってつくってきたものは、
自分が生まれる前からすでにあったのだと。
僕は歴史の一点にいて、
それを流れのなかから汲み取ることによって先人から受け継ぎ、次に渡すだけなのだと。
もちろん、そこで何もやらないわけではなく、
自分のサインをちょんと入れて渡す
――それこそがポップスに関わる醍醐味なのだ。
伝統的な音楽にちょっと手を加えて新しい試みをするのが、
実験。
僕が目ざしているのは、どこにもない音楽ではなく、
どこかにあるのだが、
それとはちょっと違う音楽だ〉(『アンビエント・ドライヴァー』)
(門間雄介『細野晴臣と彼らの時代』文藝春秋、2020年、p.15)
細野さんのつくり出す音楽は色々ですが、
聴いていると、なんとなく伸びやかな気分になり、
体と頭と心の緊張がほぐれ、
息が深くなるような気がします。
それは、
細野さんが伝統的な音楽のメッセンジャーで、
かれの働きによって、
聴く者が滔滔と流れる音楽の大河に浸れるからかな、とも思います。
・かなかなや三角ベースもうおしまい 野衾