こまめに

 

よく行く駄菓子屋に寄りましたら、
店番の、いつものおばあちゃんがいました。
煎餅と餡蜜を買っての帰りしな、
どちらからともなく世間話を持ち出し、
ほんのしばらく打ち興じるのがこのごろのならい。
「コロナコロナと騒いでいたら、
こんどは熱中症でしょ。
たいへんな世の中ですねー」
と、おばあちゃん。
「そうですねー。熱中症で緊急搬送されている人が増えているようです」
と、わたし。
「水分補給がだいじといいますけどね」
と、おばあちゃん。
「齢がいくと、体感がにぶくなるので、
時計を見て定期的に水分を摂るようにしたほうがいいみたいですよ」
と、わたし。
「そうなんでしょうね。
こまめに水分を摂らないといけないんでしょうが、
わたしは、
こまめに忘れますからね、困ったものです」
と、おばあちゃん。
ここで、わたくし大笑い。
「こまめに忘れる、ですか。面白いですね。それ、いただこうかな」
と、わたし。
「ほんとにこまめに忘れるんですよ。ははは」

 

・レンズ避け一目散の蜥蜴かな  野衾