天然ダンス工房

 

装丁家の長田さんご夫妻から案内をいただき、
ダンスの発表会を見に行った。
第1部 小品集、第2部 港町ラプソディ、第3部 幻の水族館
の三部構成。
長田さんのお嬢さんは第1部の「山登り」「市松」に、
第3部では熱帯魚役で出演。
彼女はいま小学三年生。
ごく小さいころから知っているので、
大きくなった彼女が楽しそうに嬉しそうに踊っている姿を見、
目頭が熱くなった。
熱帯魚役で舞台の前面で踊っているとき、
彼女だけが薄く口を開きにっこり微笑んでいた。
そういう場面が二度あって、
二度ともそうだった。
先生の指示どおりなのか、
それとも
彼女のこころの姿だったのかは分からない。
印象深く目に焼き付いた。
全体を通しては、
まず、
音楽の選択が抜群によかった。
なつかしさと新しさがほどよく合わさり、
舞台と客席をがっちり結び盛り上げていたと思う。
照明も大胆かつ繊細に舞台を演出し。
発表会ということだったが、
クオリティの高さに驚き、
二回の休憩をはさんで約三時間、
言葉が少ないからこその深い世界観を堪能。
ある場面では近藤良平を、
ある場面ではピナ・バウシュを、
ある場面ではピーター・ブルック、カントールを思い浮かべながら、
久しぶりにナマのダンスが織りなす時間に
たっぷりと浸ることができた。
それともう一つ、
発表会と銘打ちながら驚くほどの完成度を示していたのは、
ふだんのレッスンの賜物と感じられた。
三歳の子どもも数名加わっていたけれど、
きちきちに間違えないようにと踊るのではなく、
伸び伸びのびのび踊っていた。
演出の妙だと思う。
子どもを型にはめていこうとするのではなく、
ダンスはまず楽しいものなんだよというこころが
踊りだけでなく演出に垣間見られて
そこにも深く感動した。

 

・クリスマス駆け下りてゆく靴の音  野衾