乾いた関係!?

 

万葉集2943番

我が命し 長く欲しけく 偽(いつはり)を よくする人を 捕(とら)ふばかりを

 

私の命は何としても長くあってほしいと思います。
嘘っぱちばかりついている人、
そんなお方を、
あとでとっつかまえて懲らしめることだけが私の生き甲斐なのです。

 

これについて伊藤博さん、

男はとかくその場あたりのでたらめを吐いて女をだますことが多い。
体のいいことばかり言って実のない男の信じがたさを戯れに痛罵した歌である。
戯画風な明るさは、
折々だまされながらも、
女が男を憎みきれないでいることによろう。
こういう歌を受け取ると、
男は女がかえっていとしく思われるのではあるまいか。
関係が乾燥していて、よい。

 

現代語訳もあわせ、
ひきつづき伊藤博さん『萬葉集釋注 六』(集英社文庫、pp.501-502)からの引用ですが、
この本には、
伊藤さん以外の主だった万葉学者の説を紹介しつつも、
断固とした調子で自説を主張している箇所が多々見られます。
男とはそんなもの、女とはこんなもの、
それは、
文献史料に基づくというより、
伊藤さんの人生に基づいているようです。
きょう引用した箇所も、そんなことではないでしょうか。

 

・児を抱いて仰げば枯るる大欅  野衾