つくった本を

 

・秋来ぬと風に声せり嬰児立つ

永島忠重(ながしま ただしげ)が書いた
『奥邃先生の面影と談話及遺訓』を読もうと思い、
ネットでいろいろあたってみましたが、
結局見つからず、
あきらめかけていたところ、
ふと思い立ち、
横浜市中央図書館に問い合わせたら、
ありました。
しかも元の本と復刻版の二種類。
読むのには、
元の本でも復刻版でも変りありませんが、
とりあえず元の本を請求したところ、
館外貸し出しは禁止とのこと。
一九三四年の発行ですから、
いたしかたありません。
復刻版のほうを借り出して読むことに。
本を手にし、
不思議な感慨が湧いてきました。
なぜならその本は、
かつてわたしがつくったものだったからです。
前の出版社で
『奥邃廣録』の復刻版を出したあと、
それが思いのほか好評で、
さらに
『奥邃先生資料集』を企画し出版した
六冊の本のなかの一冊が
『奥邃先生の面影と談話及遺訓』でした。
自分がつくった本を図書館から借り出して読む、
というのは、
古本屋に売ってしまった本を
またおカネを出して買うような、
そんな感じに似ているなと思いました。

・映画の日やんやのクラッカー弾け飛ぶ  野衾