ひどい言われよう

 

 夏の朝ビッグサイトに人が這い

三十年ぶりで『源氏物語』を少しずつ読んでいます。
三十年前、読んでやるぞと気色ばんで始めたのですが、
勢いだけで、「読む」まではなかなかいかなかった気がします。
せいぜい、文字を目で追ったぐらい。
今回はどうでしょうか。
山岸徳平校注による
「ワイド版岩波文庫」で読んでいますから、
本文の文字が大きく、
注の数が最低限に抑えられ、
面倒臭くなくて気に入っています。
注の文字が小さいのは仕方ありません。
これが全集ものだと、
本文の上にも下にも横にも巻末にも注があったりして、
それだけでうんざりしてしまいます。
あるとやっぱり読んでしまいますし。
さて『源氏物語』には、
鼻の大きな末摘花という娘さんが登場しますが、
紫式部からひどい言われようをされています。
「普賢菩薩の乗物とおぼゆ」っていうんですから。
それほどデカイと。
なんぼなんでも、そんなことはないでしょう。
しかも、赤く色付いている。
ところで、この「普賢菩薩」に注が付されており、
山岸徳平先生の記述が奮っている。
注というのは、
一度読んだらだいたい読み返すことはないのですが、
この注だけは、読むたびに笑ってしまって、
注だと思うと余計に可笑しくなり、
山岸先生のお人柄が彷彿となり、
楽しくなってきます。
さて、その注ですが、
どんなのかというと、こんなのです。
「普賢菩薩は、釈迦の右に侍し、白象に乗っている、一切の理徳の仏。白象の鼻は、赤いこと、紅蓮華の色の如くであるという。鼻の赤くなるのは、飲酒者など、毛細血管の拡張による充血の場合もあるが、末摘花の鼻の如きは、卵巣障害による内分泌機能故障のために、自然に誘発せられたものである。」
山岸先生、白象ならぬ普賢菩薩に悪乗りしているとしか思えない。
いずれにしろ末摘花さん、ひどい言われようです。

 元気よく蓋押さえつけ泥鰌鍋