養命酒

 

 起きそうそで何も起きない夏休み

家人が養命酒を買ってきてくれたので、
夜、付属の小さなコップで一杯飲んでいます。
慣れないので、忘れることもありますが、
味はなかなかよろしい。
でも、味で飲むものではないのでしょう。
だって養命酒ですから。
亡くなった祖母が、
皺の寄った口元をさらに寄せ、
よく飲んでいました。
先日バウムクーヘン一本丸ごと食べて奥さんに怒られた
正紀叔父さんが祖母に買ってあげたものでした。
けっこう長く飲んでいましたから、
定期的に買ってあげていたのかもしれません。
そんなことを思い出しながら、ちょびと。
付属のコップが小さいので、
どうしても口元を寄せざるを得ない。
ついいたずら心が起きて腰まで曲げると、
祖母の心に同化していくような具合です。
「食え食え」
「要らね」
「なして食わねて。食え食え」
「要らねて。腹いっぱいだは」
「なんでも要らね要らね。食えて」
「要らねてば」
何度繰り返したか分からぬ祖母との会話。
この頃、祖母の心を想像して切なくなります。

 しょっぱくてざらり真夏の女かな