気持ち

 

 幼子を乗せてテーブル笑ひけり

梅雨が明けたと思ったら、
待ってましたとばかりに連日猛暑酷暑。
まいります。
昼、太宗庵へ行きました。
混んできたときのことを考え、
二人掛けのテーブルに向かい、
背中をドアのほうにして座りました。
ここだとテレビがよく見えます。
板わさとわかめうどん定食を頼みました。
板わさのほうが先に出来てきましたから
(そりゃそうです、切るだけですから)、
切り身を箸で持ち、
角をわさび醤油にちょいと浸して口中へ。
味わって食べているうちに女将さんが定食を運んできました。
お待ち遠さま。
いえ、どういたしまして。
いただきます。
半熟の温泉卵は適当にほぐし、醤油と混ぜてご飯にかけます。
わかめうどんの刻み生姜と柚子の香りが食欲をそそります。
店内は、いよいよ混んできました。
靴を脱いで席に着く六人掛けのテーブルには、
男六人が相席で肩を四角く寄せています。
空いているのは、わたしの前の椅子だけ。
「いらっしゃいませえ。相席でお願いしまあす」
大将が厨房から声をかけます。
さて、どんな人だろう。
振り返って見るのは、さすがにはばかられます。
一つ空いてる席に、来るか来ないか。
腹八分目にして、ごはんが少し残っているけど、
もう帰ろうかな。
と、
わたしの左横を通って目の前に腰掛けたのは、
髪の長い若く美しい女性でした。
一瞬、目を瞠りました。
女性は、細打ちうどん大盛りゴマダレを頼みました。
バッグからハンカチを取り出し、
うなじの汗を拭き取りました。
わたしは、
腹八分目を即座にやめ、腹いっぱい完食し、
いつもならあまり飲まないお茶までゆっくりすすって、
それから徐に席を立ちました。

 幼子やしゃちほこのごと仰け反れり