センチメンタル・ジャーニー

 

 観音の鋏ジョキジョキ夏の雨

この三日から五日まで秋田に帰っていました。
充実した三日間で、
一週間を圧縮して動いた気がします。
お目にかかった方々が、
貴重な時間を割いてくださり、
本に書いていないあれこれを教えてくださいました。
見せてくださいました。
九月三十日の講演にかかわる企画を推し進めてくださったり。
実り多き秋田行でしたから、
五日朝、
井川さくら駅七時十四分発秋田行き電車に乗ってからも、
手帳を開き、
思いついたことを追いかけるように、
次つぎメモしていきました。
気づかぬうちに二駅も過ぎていました。
ふと見ると、
目の前に女子学生が立ってケータイに見入っています。
聖霊女子短期大学付属高校の制服です。
あこがれの人もこの制服を着ていたのだったな。
ああ、あれから幾星霜。
月日は百代の過客か。
ふ。
我知らず、自ずからしみじみしてまいります。
と、
ん、ん、
あれ、あれ、なみだ、なみだ、涙。
目の前の紺色の制服の女子学生の左目から涙が伝わり、
頬を濡らしているではありませんか。
ぬぐおうともしません。
ケータイでメールの打ち込みに余念がありません。
そうか。別れたのか。
こんな可愛い娘に涙を流させるなんて…。
でも、きっとまたこれからいい彼氏が見つかるさ。
泣け泣け、泣きたいときには泣くがいい。
と、
ん、ん、
あれ、あれ、なみだ、なみだ、涙、もう一粒。
今度は目の上から!
ん!?
なんで目の上から…?
は。
は。
あはははは。あはははは。
馬鹿だ。
俺は馬鹿だ。
しみじみした感傷が一気にシュールな笑いに移行するのを、
わたしはどうすることもできませんでした。
今度は女子学生の右目の上からも涙がこぼれてきます。
目の上からこぼれる涙。
人はそれを汗と呼ぶ。

 御神体拝し晴れゆく驟雨かな