散髪

 

 春霞鼻も目覚める花粉症

本を読んでいたら、
頭が痒くなってきまして、
さっそく電話をすると、
すぐにやってもらえるということなので、
急いで着替えて外に出ました。
長い階段を踏み外さぬように気をつけながら駆け下り、
鎌倉街道沿いを上って下れば目的の床屋です。
窓からご主人の姿が見えます。
テレビを食い入るように見ています。
「ちわー」
「どうぞ」
「すみません。急で」
「いえいえ。ちょうど空いたところでしたから。
余裕があれば、ボランティアに行くんですけれどね。
髪を洗えなくても、トニックをかけて、
マッサージするだけでサッパリしますから」
電気バリカンで髪を刈り、
頭を洗ってもらい、
二十分ほどで出来上り。
「今日は五人目です。
先月は良かったけど、今月は、またダメです。
来月から老人ホームへ行くことになりました。
コンビニのアルバイトに毛が生えたぐらいにしかなりませんけどね」
代金を払い外へ出、
一瞬右へ行こうかと思いましたが、
気が萎え左へ曲がり、
まっすぐ階段に向かいました。

 色をつけやがて匂へよ沈丁花

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