モーツァルト事始め

 

 薄紫の春のあけぼの見てゐたり

ジャズやロックを夢中で聴いていた頃、
クラシックは最後でいいや、
というか、
自分で楽しんで聴くには、
もっとずっと後だろうと思っていました。
それなのに、
というか予想通り、
この頃、よくクラシックの曲を聴いています。
とくに、朝はモーツァルトの交響楽。
モーツァルトの時代はこうだったろうと考えられる編成で、
古楽器を用いた演奏です。
指揮はクリストファー・ホグウッド。
十九枚セットですから、
一日一枚ずつ聴いても、
あたりまえですが、十九日かかります。
今日は三周目の五枚目。
初めは、どれを聴いても同じようにしか聴こえなかったのが、
馬の顔が、いろいろ見ているうちにだんだん
賢い顔と間抜けな顔の区別がついてくるように、
って例えはいかがなものかとも思いますが、
それはともかく、
好きな曲と普通な曲、
それほどでもない曲ができてきました。
嫌いな曲はありません。
それで思ったのは、
モーツァルトは、
と言うと語弊がありそうですが、
少なくともこのセットを聴いている限り、
体調のいいときには、
さらに心身共に状態をよくしてくれる音楽だということです。
疲れたときや具合の悪いときは聴けません。
体調のすぐれないとき、
あまり天気がいいと悲しくなるように、
この音楽を聴いて悲しくなることもありそうです。
「モーツァルトはあの太陽なのだ!」
と言った作曲家もいたというではありませんか。

 啓蟄や息も和らぐ解れたり

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メール

 

 あけぼのの春を惜しんで気功かな

ケータイでメールを覚え始めた頃、
猿のようにメールばかりしていましたが、
この頃は面倒くさくなり、
電話で済ますことが多くなりました。
ただ、相手が電話に出づらいだろうと思われる場合は、
メールで用件を伝えるようにしています。
なので、電話には電話の、
メールにはメールの、
用途と好さがあるようです。
手紙にするには重く、
電話では伝えづらいこともあります。
いかに言葉を択んでも、
言葉の空しさを感じてしまう、
役に立たない、
でも、気持ちをどうしても伝えたいと思うとき、
恋でなくても、
軽さが相応しいメールで、気持ちを相手に伝えます。

 三月が超特急で過ぎてゆき

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長靴

 

 音絶えて後しんしんと春の雪

きのうは雪でしたので、長靴で出かけました。
ジーパンの裾を絞って長靴につっこみ、
ダウンジャケットに傘、
といういでたちですから、
格好からすると、よくありません。
が、こころはなにやら浮き立ってきます。
五歳の自分に戻ります。
五歳が大きくなった自分がトカントカンと歩いています。
洋ちゃん元気かな。

万歳ニンジンの写真は、なるちゃん提供。

 上気せしこころにひたり春の雪

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セイちゃん

 

 峰高く春をデコちゃん艶かし

高峰秀子さんの『にんげん蚤の市』がめっぽう面白い。
高峰さんは、ひょんなことから四年間、
お金にならない美術店をやったことがあったそうです。
お金になるはずがありません。
お客さんは大歓迎だけど、
品物をあまり買っていただくのはストックがなくなるから困る、
なんて思っていたそうですから。
その高峰さんが目をつけ、
あれこれ手伝ってくれた人にセイちゃんという人がいました。
誰だろうなセイちゃんて。
「昭和十三年生れ、江戸っ子のチャキチャキで、
とつぜん捕鯨船に乗りこんだり、
折角修業した養子先きの名門茶道具店を飛び出して
鑑賞陶器にのめりこんだり、と、かなりの変り種だけれど、
人間がまっすぐで、目筋がよくて、
キリキリシャンと明快で、
適当にオッチョコチョイなところが私向きである。」
あの高峰さんにこれほど愛されているとは羨ましい。
昭和十三年生まれ? セイちゃん?
鑑賞陶器?
もしかして?
セイと名のつく、
その後テレビによく出るようになったといえば?
やっぱりそうでした。
セイちゃんとは、
「いい仕事してますねー」の中島誠之助さんでした。
あの高峰さんとこんなエピソードを共有しているなんて、
なんとも羨ましい。

写真は、まるちゃん提供。

 寂しさはうつつに増して春の夢

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キンキの唐揚げ

 

 ほろ酔ひの会話や桃の節句なり

一人とことこと歩いて福家さんへ。
メニューに吉次(豆キンキ)の唐揚げとありましたから、
いつものドジョウの裂き定食といっしょに頼みました。
海の魚で一番好きなのがキンキで、
煮ても焼いても揚げても美味しいです。
福家さんでは高温でサッと揚げ、
ほんの少し振り塩をして出してくれますから、
もう頭からバリバリと。
孤独のグルメを堪能できます。
悦に入りながら食していると、
ガラガラと戸が開き、
見れば石橋とテラチーではないか。
三人同じテーブルを囲んでの食事は初めてかも。
二人もキンキの唐揚げを頼み、
一匹ずつ仲良く頭まで食べていました。

下の写真はキンキではありません。

 底は避け春日のケータイ酔ひもせず

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森進一かよ

 

 春を告ぐ古き街灯点滅せり

「これからの出版マーケティングの進め方」という
セミナーに参加してきました。
途中休憩十分をはさみ、
二時間半の長丁場。
いま出版業界がどうなっているのか、
上手に整理され、
まとめられており、
新しいことはなかったものの、
ふだん考えていることが
全体のなかでどう位置づけられるのか、
客観的に知ることができ、
いいセミナーだったと思います。
ただ、
講師の声が森進一的、
かつ滑舌が悪く、
マイク近づけ過ぎのため、
非っ常に聞きづらく、
あれで参加費一万円は高かった。
三千円ぐらいにして欲しかった春の夜。

写真は、まるちゃん提供。

 姉を連れ中央快速受験生

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そういうこと

 

 三月と聞いて心の華やげり

「年が明けたと思ったら、もう○月ですよ。
早いですねー」という言葉を、
このごろ何人もから聞きます。
わたしも、
あいさつ代わりというか、
少し親しい知人に向かって言うことがあります。
実際にそう感じてもいますから。
考えてみれば、
そういうことを言い合う歳になったということでしょう。
若いときはそんな風に感じなかったから、
口にすることもなく、
今の自分と同じ年頃の人と話しても、
彼彼女からその言葉を聞きませんでした。
共感を得られぬことを言っても仕方ありません。
なので、
親しくても、
若い人に向かっては言わないようにしています。

 三月の雨にあけぼの近くなり

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