鉄の門

 気功の練習において密処(日本でいうところの蟻の門渡り)をリラックスさせることが重要なポイントであることをここに書いたが、それは初心者にはなかなか難しい。先生にそのことを申し上げたら、中国では密処のことを「万矢不開」「鉄の門」 とも言うと教えていただいた。
 密処には八本の経絡が交差しており、エネルギーの集まる場所。密処をリラックスすると内分泌のホルモンを整える事ができて、腎臓強化に良いそうだ。
 なるほど。しかし、なんというか、この二つの言葉。じっと見ていると、密処というのが何か堅牢な城郭で、いかめしい兵たちが万全の態勢で扉を守っている姿が浮かんでくる。絶対にリラックスなんぞさせるものかと。ふむー。兵たちをアメとムチで手なずけるべく努力するしかないようだ。

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パンフ

 以前勤めていた出版社では、よくパンフレットやチラシをつくっていた。「3時に出かけるから、それまでにつくっておけ」などと社長から指示されると、昼食をとる時間がないこともしばしばだった。
 そんなことを思い出したのは、若い人に教えてもらい、イラストレーターなるものでパンフをつくっているからだ。画面に向かっていると、つい、前に使っていた編集機の要領で操作しようと勘違いし、あれ? なんてことも。

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いただきます

 自分でつくって食べるのでも、店に入って食べるのでも、だれが作ったかにかかわらず、いただきますと、手を合わせる。食べ終えたら、ごちそうさま。
 先日、武家屋敷といっしょに野毛坂を下りて、たまに行く中華飯店に入って食べたときのこと。大きな丸テーブルが二つあり、そのうちの一つに向かい腰掛けた。C定食とD定食を注文。相席はいつものこと。
 わたしの隣に三十代くらいのOLが座り、すぐに持参した雑誌を開いて読み始め、店員がきても眼を上げずにチャーハンか何かを注文した。わたしたちのものが先にきたので、「いただきます」と手を合わせた。すると、雑誌に集中していたはずのOLが、文字通り、じろりと横目でわたしを睨んだ。恐ろしいぐらいの目つきで。一瞬ひるんだが、悪いことをしたわけではないので、わたしは静かに箸を運んだ。途中、OLはと見ると、自分が注文した皿には目もくれず、ひたすら雑誌の頁を繰りながら箸を動かしていた。わたしはいつもこうして食事をしているのよ、と彼女のオーラが語っていた。

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ぶけご炸裂!

 わが武家屋敷ノブコは武家屋敷らしく、草かんむりを草がんむりという。武家屋敷ノブコが発する武家っぽい用語を武家語とよぶ。このごろあまり武家語が聴かれなくなったなあと淋しい思いをしていたら、ついこのあいだ、相当な武家語を耳にし、さすが武家屋敷と感動を新たにした。
 ぢデジ。
 あはははは…。ぢデジ。
 昼食が終わって帰りの坂道の途中、武家屋敷は三度、ぢデジと言った。住まいのアンテナのことを話題にしていたのだが、そんなことより何より、ぢデジ。地上デジタル放送を略してぢデジ。地面を「ちめん」とは言わないことから、地デジがぢデジ。あはははは…。ちデジと発音するよりも、なんだが電波が地を這うようにくる感じがして、地上デジタル放送の意図するところとむしろ合っているかもしれない。あはははは…。

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密処

 秘密の密に、ところ。何やら怪しい。ところが、気功においては重要なポイントで三点一線における一点なのだ。残り二点は、肩幅ぐらいに開いた足のかかとを結んだ線の中央、それと天頂(あたまのてっぺん)。
 密処をリラックスさせることはとても大事で、ここがリラックスしてないと逆効果にもなるというから注目しないわけにはいかない。が、この場所がなかなかはっきりとつかめない。
 肛門と性器の中間、日本で言うところの、いわゆる蟻の門渡りに当たるようだが、そこをリラックスさせるとはどういうことか。お灸では、ツボに印をつけ自分でもできるようにするけれど、あの伝で先生にマジックで描いてもらおうか。でも「密処に印をつけてください」と先生にお尻を向けたら、先生、驚くだろうなあ。

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ねむ

 午後の仕事を始めたとたん、無性に眠くなり、机に向かったまま、しばらく頬杖をついて居眠りをした。昼、カレーを食べたせいだろうか。オクラ豆腐カレーにイカ唐揚げトッピング。いつも食べているメニューだし、そんなことはないはずだが…。そうすると、詰め物をした奥歯の横の歯茎が腫れて歯科医に飛びこみ処方してもらった化膿止めのクスリが効いて、ということだろうか。それとも、ただの春眠暁を覚えずにすぎないのか。

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辞書のこと

 変な話だが、子供の頃、初めて国語辞書を買ってもらったとき、それが例えば小説みたいに、人の手によって書かれたものだとは到底思えなかった。ところが、年を経るにしたがって、辞書も、小説以上とは言わないけれど、小説ほどに創作されていることを知り、苦労の人肌を感じて面白いものだと思うようになった。いま、『ウェブスター辞書と明治の知識人たち』(仮題)を読んでいる。

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