いただきます

 自分でつくって食べるのでも、店に入って食べるのでも、だれが作ったかにかかわらず、いただきますと、手を合わせる。食べ終えたら、ごちそうさま。
 先日、武家屋敷といっしょに野毛坂を下りて、たまに行く中華飯店に入って食べたときのこと。大きな丸テーブルが二つあり、そのうちの一つに向かい腰掛けた。C定食とD定食を注文。相席はいつものこと。
 わたしの隣に三十代くらいのOLが座り、すぐに持参した雑誌を開いて読み始め、店員がきても眼を上げずにチャーハンか何かを注文した。わたしたちのものが先にきたので、「いただきます」と手を合わせた。すると、雑誌に集中していたはずのOLが、文字通り、じろりと横目でわたしを睨んだ。恐ろしいぐらいの目つきで。一瞬ひるんだが、悪いことをしたわけではないので、わたしは静かに箸を運んだ。途中、OLはと見ると、自分が注文した皿には目もくれず、ひたすら雑誌の頁を繰りながら箸を動かしていた。わたしはいつもこうして食事をしているのよ、と彼女のオーラが語っていた。

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