カレーきしめん

 大寒や饅頭食ひたし舌の欲
 名古屋への出張の帰り、新幹線の中で食べるつもりでお弁当を買ったのですが、ホームの待合室にある椅子に腰を下ろしたら、なんだかどうにもうどんが食べたくなり、同行の者にカバンを預け財布だけを持っていそいそと歩き出しました。ひらがなで「そば・うどん」と大書された看板を見ただけでヨダレが出てきます。二台の券売機が並んでいてどっちをみてもメニューは同じなのに、動物園の白熊みたいに左、右、左、右、また左へと歩を移し、どれにしようかしばらく逡巡。と、カレーきしめんに眼が停まったとき、ヨダレの量がどっと増したので、これは体がカレーきしめんを欲しているのだと判断し、千円冊を伸ばして投入、エイとボタンを押しました。チケットとおつりをつかみドアを開けます。「きしめんでお願いします」。メニューのところに「カレーきしめん・そば」とあったからです。ややあって出てきたカレーきしめん、近くにあった割り箸入れから一膳抜き取り、食膳の祈りを唱え、ふうふう言いながらやおら箸をつけたのですが、きしめんの程好い柔らかさ、とろけるような豚肉の甘さ、主張し過ぎず、かと言って水っぽくもないカレールー、どれを取っても文句のつけようがありません。思わず、美味い!! と太文字ゴシック体で叫んでしまいました。店員もほかのお客さんもきょとんとした目でわたしを見ています。微笑んでいる方も。わたしには、それがそうだろうそうだろうというふうに映りました。名古屋を訪れるたび、ここで食するのを習いにしているサラリーマンかもしれません。もしそうならば、わたしも彼にならおうと思った次第です。本当に美味かった!!
 あ。もちろん、買っておいた駅弁は新幹線の中でちゃんといただきました。これも旨かった。腹が減っていたのかもしれません。そうかもしれません。
 メールして孤影深かり寒の月

無題

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しばしお待ちを

5時

 寒空や女の鼻毛抜きにけり
 朝いつもより1時間半ほど早く起き、乾布摩擦、ダンベル運動、気功を終えこれを書いている。新横浜8時2分の新幹線に乗り名古屋まで出張。二つの大学に赴き出版の打ち合わせをする予定。
 年明け早々、出版大手の2社がそれぞれ二十数億の借金を抱え民事再生法の適用を申請し、事実上の倒産に追い込まれた。先の社はともかく、きのう知ったニュースには驚いた。出版界の最近の動向を見ると、本に対する世間の見方考え方が微妙に、また激しく変化していることに気づく。謙虚に世の趨勢を見据えながら迎合することなくまた孤高とならず(むずかしいなぁ!)読者に喜んでもらえまた作り手が生き甲斐を感じられる(むずかしいなぁ!)本を作らねば!!
 では、行ってまいります。

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地デジ

 新雪や白から青に変はりけり
 草?くんがテレビでさかんに宣伝しています。地上デジタル放送。
 2011年には全面的に移行するそうで、秋田の親戚でもジャパネットたかたから早々に新しいテレビを購入した叔父もいます。父は、相当の売り込み攻勢を受けたそうですが、わたしの弟の買い急ぐ必要はないとの示唆に従い、まだ購入していません。
 仕事始め、社内でささやかな新年会を催した折にそのことを話題にしたら、地デジ対応のテレビは今後ますます安くなるだろうとの大方の予測。テレビでわたしが見るのはほとんどお笑い番組だけなので、何も急いで買う必要もなさそうです。
 今使っているテレビは20年は経ちます。頑丈です。それでも、そろそろガタが来て、スイッチを入れ画像が現れると、人物でも建物でも食べ物でも、その物から右横に雨が降ったような縞が、また赤い影みたいなものまで現れます。数分で直るのであまり気にはなりません。
 ということで、購入はしばらく控えようと思っています。
 ところで、地デジ、音だけ聴くと、どうしても「血出痔」と頭の中で変換してしまいます。
 軒下のたろんぺ仰ぐ帰省かな

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仕事始め

 眼あければ一面の雪帰省かな
 賀状に目を通しながら一人一人の顔を思い浮かべ、まだお目にかかっていない人は想像し、短いコメントのなかに篭められた今年の抱負を味わった。
 印刷だけのものはどうしてもサッと読み飛ばす感じになってしまう。たった一行でも手書きの言葉が添えられていると、有難味が増す。まして、言葉だけでなく絵まで副えられていたりするとなおさらだ。ますます冨士眞奈美さんのファンになった。
 午後は、すぐ裏の伊勢山皇大神宮にて社員一同お参り。お神酒をいただき、帰社後、お蚕さんのようにシコシコと校正校閲に没頭。

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本年もよろしく

 元旦の景や膨らみ増してをり
 元旦から昨日まで故郷秋田に帰っていました。正月ともなると、昔は親戚一同会したものですが、このごろはそれぞれ子や孫が帰省するようになり、遊びに来る人も少なく至って静かな正月でした。
 気功は毎日。ほかにすることもないので、1日2回のところ、3回も。
 『背骨ゆらゆら健康法』を買ってくれた小・中の同級生から連絡があり、1時間ほど教えました。
 2008年は本日が仕事始めです。

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ひとりぼっちがつまずく

 鼻マスク眼鏡くもりて外しけり
 西田幾多郎の孫で教育哲学者の上田薫さん宅訪問。『沈まぬ未来のために』の初校ゲラをお届けした。
 以前勤めていた出版社で上田先生の本を手がけていたのだが、会社倒産の憂き目に遭い、已む無く断念せざるを得なかった。
 春風社を起こしてから、春風倶楽部への原稿をお願いしたりはしていたが、今回、予期せぬことに、先生のほうから声をかけてくださり、来年の米寿を記念して、思想の集大成とも言うべき本を刊行することになった。エッセイだけでなく、短歌、俳句、詩も含まれる。
 先生の思想を読み解くキーワードは、ひとりぼっちとつまずきということであるようだ。
 ひとはつまずくことによってしか学ばないと先生は語られる。戦場において人間の限界をまざまざと知ったという体験から発せられる言葉であろう。またひとりぼっちについては、
 一人ひとり抱きしむごときを重ねたりひとりぼっちを生かしむるため
の歌がある。
『沈まぬ未来のために』は来年四月刊行の予定。
 鼻マスク眼鏡くもりて息を止め

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