二度目も

 

・パナマ帽に雨ばちばちと当たりけり

東京ビッグサイトでの打ち合わせを終え、
その脚で川崎チネチッタへ。
そうです。
感動の傑作インド映画「きっと、うまくいく」を観に。
わたしは北野武の映画が割りと好きで、
近頃ですと、
「アウトレイジ ビヨンド」も観ましたが、
先週「きっと、うまくいく」を観たとき、
泣いて泣いて挙句の果てに
嗚咽まで漏らし、
感覚がめくられでもしたのか、
ひとを殺す映画を観ている場合じゃねぇなと
思ってしまいました。
日ごろの凝り固まった感覚と感情がマッサージされ
解きほぐされた気分でした。
「きっと、うまくいく」は、
生きる喜びを謳いあげている映画です。
インドでは自殺が多く、
とくに学生の自殺が多い。
それは、
エンジニアか医者になることで幸福が得られる
と考えている人(親)が少なくなく、
子どものときからしのぎを削って勉強し(させられ)、
競争につぐ競争によって
精神が疲弊した果ての
悲しい結末であることが、
この映画を観ることによってうかがえます。
わが子の幸福を願わない親はいない。
が、
親も世間知に惑わされることがあるのは、
またどの国も同じようです。
どのひとも、
ほんとうにしたいことをすれば、
大きな家は買えなくても
そんなに給料は多くもらえないかもしれないけど、
幸せになれるのだということを
この映画は
笑いと涙と感動をもって
高らかにうたいあげ教えてくれます。
ラジクマール・ヒラニという
この映画の監督をわたしは知りませんが、
きっとこのひとも
すんなり映画監督になったわけではないのでは
ないでしょうか。
医者かエンジニアになれという
親の期待があったかもしれません。
歌あり踊りありの
インド映画ならではの楽しさはもちろん、
緻密にていねいにつくられたすばらしい映画です。
そして
登場する役者たちがこの映画を楽しみ、
映画の役を生きていることが
観ているこちらにビンビン伝わってきます。
そのことにまた感動を覚えます。
まだご覧になっていない方、
ぜひ一度ご覧になってはいかがでしょうか。

・夏休み苦手絵日記溜めてをり  野衾

智慧の悲しみ

 

・クーラー音邪念消えずの気功かな

昨年亡くなられた藤沼貴先生の
トルストイ論考集を
ただいま鋭意編集作業中ですが、
これがめちゃくちゃ面白い!
現在の岩波文庫の『戦争と平和』は
藤沼先生の訳です。
A5判686ページ大部の評伝『トルストイ』を著した先生は、
生涯をトルストイの研究、翻訳、
日本への紹介にささげられた方です。
原稿に目を通しながら、
『戦争と平和』『アンナ・カレーニナ』など、
若い日に夢中になって読んだトルストイの人間と作品が、
血の通ったものとしてよみがえってきます。
仕事なのに、
こんなに面白くていいんだろうかと思ってしまいます。
ありがたいことです。
きのう読んでいた原稿に、
アレクサンドル・グリボエードフ
という人が紹介されていました。
帝政ロシア時代の外交官だった人ですが、
子どものときから天才の誉れ高く、
多方面でその才能の発揮を期待されながら、
1829年、
ハーレムから命からがら逃げ出した
アルメニア人少女数名を
ロシア大使館にかくまい、
それに反抗する輩が暴徒と化し大使館に押し入って、
グリボエードフは惨殺されたのち
斬首されたということです。
このとき、グリボエードフ34歳。
天才のグリボエードフは、
任地におもむく直前、
ロシア人でない女性にプロポーズし
結婚したそうですが、
それがただのプライベートな感情からのみでなかったのでは、
と藤沼先生は見ているようです。
未亡人となった女性はとても美しい人で、
グリボエードフ亡き後、
何人もの男性が彼女に言い寄りましたが、
すべて断り、
この世の生を終えた後、
彼女は亡き夫グリボエードフの墓の隣に葬られました。
1954年に岩波文庫から
グリボエードフの『智慧の悲しみ』が
翻訳出版されています。

・雨ばちばちモノトーンの空眺む  野衾

ケセランパサラン

 

・ケセランか捕まえすぐに手を離る

タンポポの綿毛みたいな謎の生物、
生物かどうかも分からない、
謎の物体ケセランパサランを
わたしは『東京都北区赤羽』を読むまで知らなかった。
のですが、
今週火曜日、
十文字学園女子大学での講座に
ゲストとしてお招きした漫画家の清野とおるさんが、
かわいいガラス瓶に入れ、
ほんもののケセランパサランを
持ってきてくれました。
かつて清野さんは、
ケセランパサランを大量に捕獲し、
ヤフーオークションに出品、
数十万円の収益があったそうですが、
その後、
ケセランパサランがカネになるというので、
捕獲合戦が巻き起こり、
バブル状態が出来(しゅったい)、
ついに収束を迎えた。
ことが漫画『東京都北区赤羽』②巻にでていますので、
みなさんよろしく。
ともかく、
ケセランパサランの実物に、
女子大生興奮!
ついでにぼくも興奮!
したわけですが、
んまさにきのうのことです。
昼、
弊社に初めてお越しくださった先生と、
イシバシと新入社員のKさんとわたしが野毛坂を下っていたとき、
んまさにわたしのまえにふわふわ飛んでいた。
のは確かにケセランパサラン!
だって、
十文字女子大学でガラスの小瓶を開けて
手にとって見せてもらったのと全く同じなんだもん!
興奮興奮大興奮!!!
捕まえてやれ!
お。
捕まえた!
割と簡単。
はっは~!
捕まえたど~!!
ではありましたが、
端っこをていねいに持って
しずしずと歩いたのですが、
両手でドームを作ったりして逃がさないように
渾身の努力を払ったのですが、
きのうは割と風が強く、
ふっと風に掃われ
車道に飛んでいってしまいました。
ああああああああっっっ!!!
よほどガードレールをまたいで
取りに行こうかと
本気で思いましたが、
クルマはビュンビュン走っているし、
我に返れば、
ちょっと大人気ない気もしてきて
さびしくあきらめました。
が、
あれは、
ぜったいに
ケセランパサランだった!
ところで、
ケセランパサランとは何ぞや?
初めて聞いた人もあろうかと思います。
ウィキペデアにもでているよ。
コチラです。

・失ひてあれは絶対パサランだ  野衾

『東京都北区赤羽』

 

・七月を乗り切るための御まじない

十文字女子大学の講座の十二回目。
きのうのゲストは、
『東京都北区赤羽』という
変った名前の漫画を大ヒットさせた
漫画家の清野とおるさんでした。
事前に
既刊の①~⑧を再読しましたが、
漫画に登場する
「変った」人たちのエピソードを読んでいるうちに、
「変った」人たちが変っているのは、
寂しさや孤独や人懐っこさがもとになっている
ことに改めて気づかされました。
「変った」人たちを
清野さんがとことん追いかけ
取材し、
漫画にしてくれたおかげで、
登場するどの人も
たしかに「変った」人かもしれないけれど、
みんな変っていていとしい
愛すべき人間と思えてきます。
それをそう感じさせる
清野さんの作家魂がすばらしい!
トークのなかで清野さんは、
刺激を求めて外国を訪れる人が多いけれど、
外国へ行かなくても
身近に刺激的な街や人がいっぱい
という話をされ、
学生さんたちも静かに耳を傾けていました。
『東京都北区赤羽』は、
第一級の文学であると思います。
東京都北区赤羽に
自由の女神の像があることの謎に迫った
第一話がまずもってすばらしく、
赤羽の正しい物語の幕開けを飾っています。
*
下の写真は赤羽でなく
成田山横浜別院へ向かうところの小路。

・あと三回女子大までの道遠し  野衾

ミズタタキ

 

・紫陽花や色を着けずに枯れにけり

父がミズを送ってくれました。
先週末、
母と目的の山を訪ね、
大量のミズを収穫したらしく、
山椒の実と自家栽培のモロヘイヤといっしょに
送ってくれたのです。
ミズタタキに山椒の実は欠かせません。
ミズの根のほう、
紅くなった部分を包丁で切り、
レジ袋などに入れ、
俎板の上で
まずは擂り粉木を用い
ミズがしんなりするまで叩きます。
この段階で手を抜くと
つぎが大変。
なので、
時間を惜しまず徹底的に叩きます。
へちゃりしんなりしたら、
袋から出して
今度は包丁のミネ(背)で叩く。
最後に包丁の刃で叩き、
ミズがねばねばとろろ状態になったら完了。
山椒の実を
前もって擂り鉢で擂っておき、
そこに味噌と隠し味の砂糖と叩いたミズを投入、
擂り鉢のなかで充分に混ぜ合わせて出来上がり。
炊き立てのご飯の上にのせていただきます。
ああ、こでらえね!

・七月の雲海裂きて陽が昇る  野衾

きっと、うまくいく

・紫陽花や母の乳恋ふ子らの色

ひさびさのインド映画。
興行収入がインド歴代ナンバーワンになった
2009年公開の大ヒット映画です。
館のある若葉町までリュックを背負い徒歩にて。
(往復一万二三六〇歩、歩いた~!)
いつもなら人がパラパラッとした感じなのに、
きのうは並ぶこと並ぶこと、
トイレの中まで列が伸びていました。
170分の
インド映画としてはふつうなのでしょうが、
長尺の映画ながら、
途中まったく飽きることなく
眠くなることなく、
どころか、
コメディタッチの映画なので、
笑ってしまうのはもちろんのこと、
人の情愛の細やかさと温かさに触れ、
これはつくりもの
つくりものなんだと
自分に言い聞かせていても、
涙がつつつうっと。
黙ってこぼれますから
そのまま放っておきましたが、
ときどきググッと嗚咽がこみ上げ、
下唇を噛んだり、
下っ腹に力を入れたりして、
声を出さぬよう我慢するのが大変でした。
こういうのに弱いなぁ。
なんとか堪えていたのですが、
映画の最後のほう、
エリート工科大学の校長が
ランチョー役のアーミル・カーンに
ボールペンを渡す
(小道具、伏線の張り方も実に巧み!)シーンでは、
とうとう堪えられず、
ウッ、ウッと声が漏れてしまいました。
男同士の友情を軸に、
恋愛あり夢あり希望あり謎解きあり、
あいだに家族の風景をも描き、
また社会問題を背景にあぶりだしての、
実になんともおもしろく楽しく、
また考えさせられもする
エンターテインメントはこうでなくっちゃの、
充実てんこ盛り!百点満点の映画でした。
感動!!

・七月の予定表まず叩き込む  野衾

くじ

 

・梅雨湿り珈琲の香の懐かしき

横浜駅に近接するジョイナスか
ダイヤモンド地下街でいま買い物をすると、
お買い上げ500円(税込)ごとに
サマーチャンスくじの抽選券が1枚もらえます。
抽選券6枚で1回、
ガラガラを回してポロッと玉の出るくじを引けます。
ジョイナスも地下街もよく利用するので、
この催し物が開催されているこの一か月間、
わたしは三度抽選会場に足を運びました。
特賞は、
ハノイの旅または香港の旅。
きのう、
抽選会場に並んでいたら、
横にいた初老のビジネスマンが、
若い部下に向かって、
むかしベトナムが北と南に分かれて
戦争したことがあったのを知っているか、
なんてことを訊いていました。
ぼやけたことを答えた部下に滔々と
ベトナム戦争についてひとしきり語っていました。
この二人、
なぜ列に並ばず
わたしの横にいたかといえば、
確かめたわけではありませんが、
おそらく、
ベトナム戦争について
ぼやけたことを答えた部下のさらに部下が、
三人を代表し、
というか、
上司に命じられてくじを引くべく、
列に並んでいたものと想像されます。
そうにちげーねー!
なんて。
ここで別に興奮することはないわけですが…。
それはともかく。
わたしはガラガラを一回回し、
赤い色の
ウサギの糞みたいな玉が
ポロッと出て、
情けないポケットティッシュを
一個もらい、
回れ右して気功教室へ向かいました。
ベトナム戦争の講義はまだ続いているようでした。

・待ち待ちて我田他田も喜雨の中  野衾