・乾きたる音のどこまで枯野かな
原稿読みで疲れての帰り、
だれもいない廊下を
重く歩いてエレベーターへ向かうと、
閉まりかけているドアが
視界に入り、
急ごうか
という気持ちが
ほんの一瞬もたげたものの、
いいや、
で、
ドタドタとドアの前まで。
と。
当然閉まっているものと思い込んでいたドアが開いたままです。
「あ。どうもありがとう」
小学校三年生ぐらいでしょうか、
いっていて四年生ほどの女の子が
エレベーターの中でボタンを押し続けていました。
ドアが閉まっていっしょに一階へ。
「公文に行ってきたの?」
「はい」
一階についてドアが開くと、
女の子はまたボタンを押しています。
「ありがとう」
先に出て、
会館を後にし。
外はとっぷりと暮れています。
・日向ぼこ伸びする猫の背中かな 野衾
・新米や朝の食卓父と母
メガネストラップをつかうようになって二週間ほどたちますが、
どうもしっくりくるのがなく、
あれこれ四、五本買っては
つぎつぎ試してみました。
太い布製の紐だったり、
金属製の鎖だったり、
金属製のものでも
細いものあり太いものあり。
それぞれ特徴がある
とはいうものの、
いわば帯に短し襷に長し。
いまのところ落ち着いているのが、
薄茶色の馬革の紐。
だんだん身に着けていることを忘れていますから、
ほどよく馴染んできたのかもしれません。
ただ一点、
これをしていると、
自分が馬になった気にもなり、
手綱を後ろで操られているような、
そんな不思議な今日このごろ。
・秋の日を孫を背負ひて時忘る 野衾







