憂苦に溺れず

 

・カウンター句をひねりつつ鮨を食ぶ

 

加藤楸邨の『芭蕉全句』を読んでいたら、
『奥の細道』に登場する

 

蚤虱馬の尿する枕もと

 

を解説し、
「単なる描写に終らず、憂苦に溺れず、
自分の置かれた境を踏みしめてゆるがない感じがある」
の記述に出くわしました。
溺れるのは、
水か快楽だとばかり思ってきましたが、
たしかに憂い苦しみに沈潜し、
溺れてしまうことも間々ありそう。
憂い苦しみの味か。
表現が自己の表出に留まらず、
表現することを通じて
自己が鍛えなおされるという境涯を尻、
知りたい。

 

・浮世にて秋の隣の憂き世かな  野衾