二日間、浩瀚な学術書をおもしろく読み、夕刻、壁に掛けてある時計を見たら、
五時を過ぎていた。
散歩がてら外へ出てみることに。
十二月に入ったので、この時刻でもすっかり暗くなっている。
すでに月が高くまで昇っている。
月齢はどれくらいか、
満月までにはあと三、四日かかりそうだ。
暗いなか、山の細い階段を下り、
まずはドラッグストアへ。
歯ブラシと魚肉ソーセージとチチヤスのヨーグルトを買う。
もう一軒、コンビニにも寄るつもりだから、
大きめのレジ袋に容れてもらう。
外はとっぷり暮れている。
いつも長く待たされる信号で待っているあいだ、見上げると、月はさらに天心へ。
信号が青に変って横断歩道を渡る。
左に曲がれば程なくコンビニだ。
と、
「ほら、ケンちゃん、月が出ているよ」
「……」
「見える? きれいだよ」
「うん」
ふり返れば、
すぐ後ろを乳母車を押している若い女性が、なかの子供に話し掛けている。
母に話し掛けられた子は、だまって月を見上げている。
つられてわたしも見上げた。
我に返り、
コンビニで買うつもりのものを算えあげ、
明るい店内へ入った。

 

・吾もまた過客となりて枯野行く  野衾