ヤザワさんとイトイさん

 

イトイさんとヤザワさんでもいいわけですが。
知らずに過ぎていましたけれど、
2019年に、
七年ぶりに対談をしていたそうで、
それがネット上で読むことができます。
タイトルは、
「ほぼ日刊イトイ新聞創刊21周年の記念企画 矢沢永吉×糸井重里 スティル、現役。」
はい。
ヤザワさんは、矢沢永吉。
イトイさんは、糸井重里。
ふたりの対談、
長丁場ですが、むちゃくちゃおもしろく、
感動しながら、また、うらやましくも思いながら、
最後まで読みました。
なにがうらやましかったかといえば、
こういう対談の時間は、
いかに事前の準備をしても、
一朝一夕にはぜったいに実現できないものである
と感じたからです。
ヤザワさんの話したことをイトイさんがまとめた『成りあがり』は、
ベストセラーになりましたが、
それについても触れられていました。
本づくりのために、
イトイさんがヤザワさんにくっついて歩き、
どこでもテープを回すものだから、
「おまえ、しつこいんだよ」
と、
ケンカになりそうなこともあったのだとか。
『成りあがり』という書名は、
イトイさんの提案によるそうですが、
ヤザワさん、
初めは気に入らなかったのに、
イトイさんの話を聞いて納得し、
受け入れたそうです。
ひとの話を聴いて、それを録音し、テープ起こし、校正、編集し、
まるでヤザワさんが語っているかのように
読めるけど、
そんなことはあり得ないわけで、
あの本がいかにイトイさんの力業であるかを、
まざまざと見せつけられるような、
そして、
ヤザワさんのひととなりを文字で知ることができる、
すばらしい本でした。
そういうかけがえのない、
火花が散るような時間があったればこそ
の、
2019年の対談なのだとつくづく感じ入りました。

 

・ひぐらしはとどかぬ夢の名残かな  野衾