座右の銘

 

先だって、
『アラン『定義集』講義』の著者・米山優(よねやま まさる)先生と対談した折のこと、
最後の最後のほうで、
教え子の学生から
「先生の座右の銘は何ですか?」
と尋ねられたときのエピソードを話してくださいました。
訊かれた先生、
ちょっと考えてから、
「ていねいに生きることかな」
と答えたのだとか。
大学で『定義集』をはじめアランの著作を取り上げ講じてきたことはもとより、
大学院生の頃から、
アランに親しんでこられた米山先生ならでは、
と感じ入りました。
以来、
本のページから目を上げたとき、
通勤の行き帰り、
また、夜、床に入ってから、
「ていねいに生きる」
を思い返すことが多くなりました。
きょう、
ていねいに生きたかな?
ふと思い出したことがあります。
矢沢永吉さんが、
糸井重里さんとの対談の折だったと思いますが、
歳をとって、朝、スッと起きられなくなったことを話していました。
目が覚めてから起き出すまで、
からだの端端に血が巡っていくのが分かると。
それが分かるということは、
起きることにていねいだからでしょう。
作家の五木寛之さんは、
足の指それぞれに名前を付けていて、
風呂に入った折など、
指に付けた名前を呼びながら、
ていねいに一本一本洗うのだとか。
事程左様に、
行住坐臥、
何ごとに限らず、
「ていねいに生きる」コツがありそうです。

 

・秋澄めば背筋伸びゆく故郷かな  野衾