カレーきしめん

 大寒や饅頭食ひたし舌の欲
 名古屋への出張の帰り、新幹線の中で食べるつもりでお弁当を買ったのですが、ホームの待合室にある椅子に腰を下ろしたら、なんだかどうにもうどんが食べたくなり、同行の者にカバンを預け財布だけを持っていそいそと歩き出しました。ひらがなで「そば・うどん」と大書された看板を見ただけでヨダレが出てきます。二台の券売機が並んでいてどっちをみてもメニューは同じなのに、動物園の白熊みたいに左、右、左、右、また左へと歩を移し、どれにしようかしばらく逡巡。と、カレーきしめんに眼が停まったとき、ヨダレの量がどっと増したので、これは体がカレーきしめんを欲しているのだと判断し、千円冊を伸ばして投入、エイとボタンを押しました。チケットとおつりをつかみドアを開けます。「きしめんでお願いします」。メニューのところに「カレーきしめん・そば」とあったからです。ややあって出てきたカレーきしめん、近くにあった割り箸入れから一膳抜き取り、食膳の祈りを唱え、ふうふう言いながらやおら箸をつけたのですが、きしめんの程好い柔らかさ、とろけるような豚肉の甘さ、主張し過ぎず、かと言って水っぽくもないカレールー、どれを取っても文句のつけようがありません。思わず、美味い!! と太文字ゴシック体で叫んでしまいました。店員もほかのお客さんもきょとんとした目でわたしを見ています。微笑んでいる方も。わたしには、それがそうだろうそうだろうというふうに映りました。名古屋を訪れるたび、ここで食するのを習いにしているサラリーマンかもしれません。もしそうならば、わたしも彼にならおうと思った次第です。本当に美味かった!!
 あ。もちろん、買っておいた駅弁は新幹線の中でちゃんといただきました。これも旨かった。腹が減っていたのかもしれません。そうかもしれません。
 メールして孤影深かり寒の月

無題

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しばしお待ちを