光りの魔術師

 ありがたや満ちるも欠けるも冬の月
 技術の進歩により、カメラもどんどん進化し、プロもアマも関係ねえことになりそうだが、岡山での四日間の撮影に同行して、その違いをまざまざと見せつけられた。
 ひとことで言って、プロのカメラマンは光りを操作する。光りに感謝し、光りを頼み、光りを導く。
 短気なわたしは、もういいよ橋本さんと何度も言うのだが、そんな言葉は聞いてか聞かずか、どうにも妥協してくれない。わたしのほうが根負けし、もう橋本さんの好きなように撮らせるしかない。つばぜり合いをしながら、それでもここ一線は譲れないといった風情の橋本さんを見ているのは、愉しくもある。歩く荷物の橋本さんが準備万端用意してきた機材と、あるものは全て利用する機転で、光りを操り、写真家は呪術師に変貌をとげていく。
 三日目、曇っていたが、雲の切れ間から光りが差し、自然光で陶器などの作品を撮影することになった。光りは刻一刻と変化し、言うことを聞いてくれない。撮影に立ち会い、光りがこんなに変化するものかと改めて驚いた。「自然光に勝る光りはない」と橋本さんは呟き、光りが少しゆるんだ頃合を見計らってシャッターを切った。
 背骨揺れ風邪菌住まふ処なし
 恥ひとつ忘れるたびに年を取り

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出張撮影

 峠来て風に揉まれし紅葉かな
 岡山への出張無事終了。同行の橋本カメラマンも満足げ。
衣笠澤子の世界 押花・野の花の饗宴』を以前小社から刊行したが、その先生の第2作品集となる。
 押花はさらにパワーアップし、さらに今回はグラスアート、ポーセリンペインティングなど新分野に果敢に挑戦し、創作世界はますます広がりを見せている。
 撮影に使用させてもらったギャラリー「もみつる」は、大正時代に建てられたというモダンな建造物。「もみつる」は「紅葉」の元の動詞で、ギャラリーの周りは、今まさに言葉どおりのすばらしい景観を見せていた。
 待ち人やメール受信の夜寒し
 メール打つ指もかじかむ師走かな

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