ひとりぼっちがつまずく

 鼻マスク眼鏡くもりて外しけり
 西田幾多郎の孫で教育哲学者の上田薫さん宅訪問。『沈まぬ未来のために』の初校ゲラをお届けした。
 以前勤めていた出版社で上田先生の本を手がけていたのだが、会社倒産の憂き目に遭い、已む無く断念せざるを得なかった。
 春風社を起こしてから、春風倶楽部への原稿をお願いしたりはしていたが、今回、予期せぬことに、先生のほうから声をかけてくださり、来年の米寿を記念して、思想の集大成とも言うべき本を刊行することになった。エッセイだけでなく、短歌、俳句、詩も含まれる。
 先生の思想を読み解くキーワードは、ひとりぼっちとつまずきということであるようだ。
 ひとはつまずくことによってしか学ばないと先生は語られる。戦場において人間の限界をまざまざと知ったという体験から発せられる言葉であろう。またひとりぼっちについては、
 一人ひとり抱きしむごときを重ねたりひとりぼっちを生かしむるため
の歌がある。
『沈まぬ未来のために』は来年四月刊行の予定。
 鼻マスク眼鏡くもりて息を止め

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