オーソドックスな編集

 小社の本づくりについて最近よく口にする言葉に「会社はまだ8年目で新しいですが、編集は極めてオーソドックス、古臭いといってもいいぐらい」がある。例に違わず出版業界もパソコンが普及し、パソコンなしでは夜も日も明けないのは他と同様だが、パソコンがいくらバージョンアップしても、パソコンが校正・校閲をしてくれるわけではない。農機具がいくら優秀になっても、その年の天候が作物の出来不出来を決めるように、本づくりにおいて大切なのは、著者との密な触れ合い、コミュニケーションの質だ。極端なことを言えば、本はその結果の産物。著者と会わずにデータだけ受け取って本をつくることなどあり得ない。著者に会うことで、その表情や口ぶり、自宅なら門構えや部屋の雰囲気、庭の静けさ、廊下の暗さなどから、送られてきたデータだけでは読み取れなかったもろもろが見えてくることがある。本にはそういうものも反映するし、また、反映させなければならないと思っている。オーソドックス、古臭い所以だ。