ホンダゼストのテレビCM

 このごろ何とはなく強い興味を無くし、ふらふらしていたのだが、木梨憲武と中島知子が出ているテレビコマーシャルを見て、木梨が被っているあの帽子、いいなあと思った。いくつかバージョンがあるうちの象が出てくるコマーシャル。薄いグレーのハット。インターネットで調べてみたが、ヒットしない。そうしているうちに、気が萎えてきて、いいやもう、と思うようになった。そのとき、ふと、飯島耕一さんの詩の一節を思い出した。
何にもつよい興味をもたないことは
不幸なことだ
ただ自らの内部を
眼を閉じて のぞきこんでいる。
何にも興味をもたなかったきみが
ある日
ゴヤのファースト・ネームが知りたくて
隣の部屋まで駆けていた。
 きのう、ビルの公衆電話からホンダに電話し訊いてみた。ゼストのテレビCM象篇で木梨が被っている帽子のメーカーが知りたいのですが。電話口の女性は丁寧に応対してくれ、しばらく間があってから、管理部に確認しないと分からないので少し時間をくださいとのこと。わたしは、自分のケータイの番号を告げ、お礼を言って電話を切った。
 正直に言えば、飯島さんの詩を「思い出した」のではない。ずっとあたまに引っ掛かっていた。その詩に後押しされるようにして、少し勇気をふるって電話したのだ。あまり詩を読まないわたしが好きな詩の一つ、「ゴヤのファースト・ネームは」