*二、三年前、新聞のコラムにこんな記事が出ていました。
ある小学校で先生が、
「氷が解けると、なんになりますか」
と質問したところ、
おおかたの生徒は「ハイ、水になります」
と答えたという。
ところがそのなかでひとりだけ
「春になります」と返事したというのです。
氷が解ければ水になる、という答えもまさに正解、
その通りにちがいありませんが、
「春になります」という答えのなかには、
大人には思いつかないような無垢な童心が宿って、ほのぼのとした詩情さえ感じられます。
しかもこの言葉のなかには、
寒気きびしい地方の風土感さえ含まれている
ように思われるのです。
芭蕉のいう「三尺の童にさせよ」という言葉の真意も、
このようなところにあったのではないでしょうか。*
上の文章は、
『NHK俳句入門 飯田龍太 俳句の楽しみ』(日本放送出版協会)
からのことば。
肝に銘じておきたいと思います。
・くびれ持ち僧が旅する瓢(ひさご)かな 野衾
ヤフーニュースに出ていた日刊スポーツの記事に
泣かされました。
高校卒業後プロ入り志望を明らかにした吉田輝星が
親をふくめ将来について話し合った折のこと。
*立ち会った渡辺勉校長(55)によると、
吉田は控えめに「プロで力を試したい」と切り出した。
対して父正樹さん(43)からは引退後を考え、進学を勧めるような話もあったという。
渡辺校長は「吉田が申し訳なさそうにしていたのが気になった」
と言い、
「気持ちが固まっているなら、自分が大学側に謝ってお願いするから」
と背中を押したという。*
上の文の5行目*から11行目*まで、
記事そのままです。
「申し訳なさそうにしていた」吉田の気持ちが想像できます。
また渡辺校長の発言から
教育者の自負と責任を感じました。
なにも大げさなことでなく、
ひとの話を聞くときも
自分の土俵でなく
相手の話に没入して耳を傾けることは
簡単なようで簡単でない。
いまさらですが、
深い愛情がなければできないと思うからです。
そういう教育者が秋田にいる
ことを誇らしく思います。
・英連邦墓地の裏手の穴まどひ 野衾