をりとりて

 

すすきの季節になりました。
自宅近くの坂道、
ちょっとした崖にも銀色の尾花が風に揺れています。
ひらいたばかりの尾花は
茎に近いほうが
ほんのりピンク色をしています。
飯田蛇笏の俳句に

 

をりとりてはらりとおもきすすきかな

 

がありますが、
すすきは
万葉の時代から歌に詠まれてきました。
歌に詠まれる前から
日本人はその風情、
たたずまいに魅せられてきたのでしょう。
いま「をりと」るすすきが、
「はらりとおも」いのは、
日本人が古くからすすきに託してきた思いがあるからでしょうか。
すすきならすすき
という言葉は、
目の前のすすきを表しながら、
折り重なる時間を運んできてくれるようです。
たった十七文字ではありますが、
ひろやかで
のびのびした時空へといざなわれます。

 

・公園に動くものあり小鳥来る  野衾