青江舜二郎の『狩野亨吉の生涯』がおもしろい。
かつて中公文庫に入っているものを読んだが、
今回は、
そのもとになった明治書院版。
そのなかに、
亨吉が安藤昌益の自然真営道の筆写本を手に入れたくだりが記されており、
ひきつづき、
中村千代松あてに
昌益の著書、日記、書翰、系図等があれば、
借用もしくは購入したい旨の手紙を出したことが
明記されている。
明治三十二年のことだ。
明治三十二年といえば、
奥邃がアメリカから帰国した年。
さて昌益も亨吉も秋田出身。
だから、
昌益に関して亨吉が
秋田出身の名士・中村千代松へ問い合わせしたというのも
宜なるかな。
ところで中村は
その最期を看取るほど奥邃に親近した人。
となると…。
しかしこの時点で中村は
奥邃を知らない。
というか、
奥邃はまだ日本の土を踏んでいない。
その後、
もし中村を介して亨吉が奥邃を知ることがあったら、
また会うことがあったなら、
と、
稀代の傑物二人の遭遇を夢見ては
ひとり愉しんでいる。
・エンジン音止んで夜へと刈田かな 野衾