三尺の童

 

*二、三年前、新聞のコラムにこんな記事が出ていました。
ある小学校で先生が、
「氷が解けると、なんになりますか」
と質問したところ、
おおかたの生徒は「ハイ、水になります」
と答えたという。
ところがそのなかでひとりだけ
「春になります」と返事したというのです。
氷が解ければ水になる、という答えもまさに正解、
その通りにちがいありませんが、
「春になります」という答えのなかには、
大人には思いつかないような無垢な童心が宿って、ほのぼのとした詩情さえ感じられます。
しかもこの言葉のなかには、
寒気きびしい地方の風土感さえ含まれている
ように思われるのです。
芭蕉のいう「三尺の童にさせよ」という言葉の真意も、
このようなところにあったのではないでしょうか。*
上の文章は、
『NHK俳句入門 飯田龍太 俳句の楽しみ』(日本放送出版協会)
からのことば。
肝に銘じておきたいと思います。

 

・くびれ持ち僧が旅する瓢(ひさご)かな  野衾