ネクタイ

 ゲコゲコと宇宙の摂理を歌ひけり
 先日、アルバイトの商栄くんにネクタイをプレゼントしました。プレゼントといっても、新しいものではありません。冠婚葬祭以外、このごろわたしはネクタイをほとんどしないので、もしよかったら使ってください、というわけです。
 商栄くん、日替りでさっそくそのネクタイをしてきました。おもしろいものですね。
 商栄くんは上背もあるし、がっしりタイプで、髪の毛もふさふさ、どうみてもわたしとは似ていません。それなのに、そこに、わたしがいました。前の会社でがんばっていた当時の出来事、デタラメな生活、精神状態まで思い出しました。
 今日、また何本かプレゼントしようと思います。

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地産地消

 ひきがえるお前鳴くのは何のため
 このごろは野菜が本来保有するはずの成分が年年目減り傾向にあるそうで、そんなことが原因しているのか、どの野菜を食べても、味が薄まっているような気がします。薄味の野菜に慣れてしまっていますから余計に、帰省して食べた山菜は濃厚かつ美味至極で、山の空気と大地の気までいっしょに取り込んだような具合でした。
 まずはアイコ。アイノコと地元では言ったりします。ギンダラと煮ると美味いんですね。あくの強い山菜にはアブラののったギンダラが合います。タラではだめです。アイコとギンダラを煮ることを、わたしは祖母から教わりました。教わったというか、見ていただけですが。祖母がだれから習ったのかは分かりません。経験的に、これにはこれが合うと覚えたのかもしれません。
 父が山から掘ってきた天然物の山芋でつくったとろろ汁、美味かったぁ!! あれは、どんな高級料亭でも出せない味なんじゃないでしょうか。あれぐらい微妙な味になると、運搬の時間の作用をきっと受けるはずです。地産地消は、山菜のためにある言葉だと思いました。
 向かいの久雄さん(小学校に入る前、風邪をこじらせ高熱を出して入院したわたしを見舞ってくれました。今は長距離トラックの運転手かな。彼も山が大好きで、帰省するとすぐに山に入ります)が山から採ってきたウドを父がもらってきて、母がゴマ和えをつくりました。これまた美味い! 水分を多く含んで谷のせせらぎまで彷彿となります。素材の美味さにはどんな料理も敵いません。

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井内字上野

 床の間の雉も羽ばたく帰省かな
 今回は三泊四日の帰省でした。
 三日目の朝、ふと思い立って散歩に出ました。
 家を出て、バス通りへ。左へ曲がり、道は右へカーブしながら下り坂になります。幼なじみの昌子さんの家を右に見ながら歩きます。右手に、子供のころよく通った床屋さん、左手に、三幸商店。さらにすすんでY字路。左の道に入ってあるくと、ここも同級生の家です。
 道がくねくねとカーブして川沿いに出ます。黒塗りの家は兼人さんの家。橋を渡ってさらにあるき、右へ折れて急坂を上り、同級生の晶子さんの家の前を左に曲がると墓地です。何度も夢に見ます。墓を訪ねると心が落ち着きます。墓地の端に立つと、遠くの丘の上に我が家が小さく見えます。井内字上野の地名のとおり。
 墓地を下り、元来た道を橋まで。そこから、今度は右へ。千世子さんの家があります。子供の頃、米を持って麹を買いに来ました。そこから道が急に狭くなります。二手から流れてきた水が一つになり、コンクリートの段差を舐めて大麦の方へ流れていきます。
 銀河鉄道の夜の最後のシーン、カンパネルラのエピソードが夢に出てくるとき、わたしの場合はいつもこの場所です。弟とよく釣りをしました。アブラハヤ。捕れたてを油で炒めたり焼いたりすると美味しい魚です。そこからもう一度、四方に目をやりました。井内字上野。広げた両手に入るぐらいの広さしかありません。
 田仕事をしている人に名乗れば、どこの誰と、きっと教えてくれるのでしょうが、それもなんだかはばかられます。昌子さんの家を正面に見て、スイッチバックのように上り坂に入れば元来た道です。
 家に着いて時計を見たら、ちょうど一時間。でも、もっと多くの時間を歩いたようで、少々疲れました。
 父母弟祖父母ゐて大運動会

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商栄

 瞑想会嵐の底のアメフラシ
 先月から緒方さんという方がアルバイトに来ています。上背があり、がっしりした体つき、フットボール選手のようです。それでいて(それでいて、というのも変ですが)仕事ぶりは繊細かつ緻密。社員は皆ニックネームがありますので、緒方さんのも考えなければなりません。考えました。しょうえい。照英というテレビタレントがいますが、緒方さんは、彼にほどよく似ています。向こうは、照るに英語の英で、しょうえいですが、わが社のしょうえいは、商売繁盛の意味で、商栄。商栄くん。呼ぶたびに、商いが栄えてくるようで愉快です。

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天才りなちゃん、ジャズを聴く

 五月晴れ尻に火が着く瞑想会
 近所の天才りなちゃんは、自分でもピアノを弾き、ジャズが好きなので、インタープレイの極致、ビル・エバンスのCD『ポートレート・イン・ジャズ』を貸してあげました。
 どうだったかな。聴いてくれたかな。
 そうしたら、りなちゃんのママが言うことに、「枯葉」のTake2が好きなようです、と。
「枯葉」は2曲目と3曲目に入っています。ちゃんと聴き分けられたのでしょうか。
 天才なので、きっと聴き分けられたのでしょう。

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