執着と時間

 

・はしゃぎ来て公園の秋深まれり

存在と時間てのもありました。
そうでなく。
中村元訳『ブッダのことば スッタニパータ』
を読んでいると、
もうもう、
執着するな執着するなのオンパレード。
考えてみれば、
苦しさのもとはすべて執着、
お釈迦さまはそのことを身をもって知ったのでしょう。
知っただけでなく、
それを捨て、
それから離れることを実行し
実行できた。
ニルヴァーナ。
中村元は「やすらぎ」と訳しています。
ところで。
初めは、
なんだかうるさいな、
わかったわかった、
ブッダのことばをスットバシータ
みたいに読んでいたのですが、
毎度毎度いわれると、
耳タコになり、
だんだんマヒし、
法華の太鼓よろしく
あたりまえのことに思え身に沁みてきた。
そうして
何を思ったかといえば、
泣く子と時間には勝てねーなー
ということ。
時間に勝てるものなし。
エーエンなんてものはない。
勝てるとしたら、
それは人智を超えている。
だから執着したって始まらない。
祈りも繰り返し。
繰り返しに勝るものなし。
バンバゴダーヂーアーヂマレー
バンバゴダーヂーアーヂマレー
(婆たち集まれ)
婆たちだって、
かつては、
はち切れんばかりの少女だったのだ。
子供のころ、
大きな数珠を手渡しながら
輪になって念仏を唱え練り歩く老婆たちを
ちょっとこわごわ見ていた
ことを俄かに思い出しました。
老婆たちを見ていた子供は早初老。

・この本を読んで何する秋の暮  野衾

グビグビ感

 

・冬の蜂ジェイソンのごと揺るぎなし

二週間ほどアルコールを断ち、
その甲斐あって、
右膝の状態がすっかり良くなりました。
が、
ここで飲んだら元の木阿弥。
とは言い条、
ビールを一気に飲み干すときの
あの喉ごしの爽快感というものはなかなかに捨てがたい。
けど、
ビールは飲めない。
しかし爽快感には未練あり。
でも飲め…
しつこい。

そこで一計を案じ。
牛乳があるじゃないかあ!!
むか~しむかし
陸上部で汗を流していたころ、
部活終了後に
けっこう牛乳を飲んでいた時期があった。
ありました。
それを思い出した。
ゴクッゴクッゴクッ、
グビッグビッグビッ。
水でもよさそうなものですが、
水だとそうはいかない。
おそらく、
ほんの微かの粘着力とでもいうのか、
それがいいのでしょう。
ということで、
久しぶりに牛乳飲んでます。

・おしめえよそれを言つちあ蜜柑むく  野衾

火だるまの

 

・七五三晴れ着の笑みの前歯無し

ひらのこぼさんの俳句入門書は、
肩が凝らず、
わかりやすく、
面白いので
これまで数冊読んできましたが、
いままた『俳句開眼100の名言』を読んでいます。
むずかしい翻訳のぶっとい本を読み
肩がガッチガチになった時など、
一服の清涼剤として最適です。
きのうの夕刻、
また肩が凝ってきましたから、
重い翻訳書を傍らに置き、
『俳句開眼~』を手に取り、
栞のところから読み始めると、
秋元不死男の
こんな句が紹介されていて、
思わず声を出し笑ってしまいました。

○火だるまの秋刀魚を妻が食はせけり

焦げすぎの~とか、
焼けすぎた、
ではなく、
火だるまの。
ぼわっぼわっと炎まで見えるよう。
火だるまになった秋刀魚
を眼にしたときの
作者の貌まで目に浮かびます。

・吟行や山を粧ふ友のこゑ  野衾

水晶文旦

 

・粧へる山に入りたし祖母見たし

はじめていただくものは、
弥が上にも期待が高まりますが、
期待以上に
美味しうございました。
その名も水晶文旦。
水晶ですもの。
クリスタルクリスタル。
水よりも透明で。
果肉が柔らかく、果汁たっぷり。
いやあ、
柑橘類の王様じゃないかな。
ことしはルビーロマンもいただいたし、
フルーツの当たり年でありました。

・風止みて尚も色めく薄かな  野衾

グビジョッキ

 

・深き風山にしみ入る身にも入む

突然の猛烈な膝の痛みは痛風発作、
きっとそうだ、
そうにちげーねー!!
というわけで、
医者には行かず、
アルコールを一週間断ったらほとんど治りました。
よかった。
この夏猛暑酷暑で、
家に帰ってビールをグビグビグビと、
首ジョッキからあふれるぐらい
飲みましたから、
とうとう基準値を超えてしまい、
痛みと化してしまった
のでしょう。
階段を上り下りするとき、
まだ少し痛みが残って、
庇うようにしなければなりませんので、
ここは気をゆるめず
風に負けず
誘惑に負けず
大事にして、
もう少し断酒の日々を続けます。

・白き雨二日つづきの冷まじき  野衾

注を読む

 

・重なりし雲剥がれゆく秋高し

仏教が教団としてまとまってゆく前の
ブッダの言説を書き記した
『ブッダのことば スッタニパータ』(中村元訳)
を読んでいて
面白い注にぶつかりました。
「盗みをして生活する者」という言葉
についての注で、
そこに、
こう記されています。
「古代インドでは、盗賊が一種の職業と見なされていた。
そうして盗賊と国王とは並べて挙げられている。
どちらも良民から暴力を以て何ものかをゆすり取るからである」
あからさまでない巧妙な暴力を
権力とよぶとすれば、
現代においてもまったく同じ。

・朝寒やはろばろ遠く富士を見る  野衾