今も昔も

 

 汚れ取るはずが汚れて春の雨

『南総里見八犬伝』もいよいよ第九輯、最後の輯です。
とは言っても、
第一輯から第八輯を合わせた分量と第九輯が同じくらいですから、
やっと後半に入ったような具合。
さて、その巻之十六に面白い文章がありました。
〔  〕の中に本文より小さめの文字が並んでいます。
どうも馬琴先生の繰り言のようです。
〔桑田郡を初輯第八回犬懸村の段に筆工謬て桑田村に作れり
只この謬のみならず第一輯には総目録にすら誤字あり脱字あり
本文にも毎巻誤字と、てにをはを誤れる者少からず二輯三輯にも亦多かり
当時の板元校合なほしの等閑なればなり〕
桑田郡が桑田村になっているだけじゃなく、
目次にも誤字脱字があり、
本文にも巻ごとに誤字はあるし、
「てにをは」を間違えている箇所が多い。
それは出版社が校正を怠ったからだ、というわけです。
馬琴先生のトホホの声が聞こえてくるようではありませんか。

 田を植ゑし母の背中のフの字かな

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