医食同源プラス4

 「狭くても美味しいお店」がキャッチフレーズの小料理千成にて小社忘年会。ほぼ社員同様のスタッフである橋本さんと多聞君も招き、総勢11名。かっちゃーん! 旨かったよー!!
 去年も一昨年も忘年会は小料理千成で鍋料理を中心に、かっちゃんが腕をふるった料理を堪能しているわけだが、その鍋が年々バージョンアップしている。
 写真入りで紹介した2004年は23鍋と勝手に称した。昨年は25鍋。今年はさらに27鍋。この数字、鍋に入っている具の種類。2006年の今年の具は何かといえば、白菜、ねぎ、くずきり、豆腐、えのき、しいたけ、雪れいだけ、せり、しめじ、春菊、紅葉麩、鮭、牡蠣、海老、ほたて、つくね、鰯、あなご、いか、海老つくね、鶏肉、豚肉、蛤、ほっき貝、うずらの卵、ふぐ、かに、以上27品目。すごい! さすが! やってくれるね、かっちゃん! 最後のおやじ、でなく、おじや、スープは薄味なのに、こくがあり、深く濃厚な味わい。一個一個の細胞に医食同源の四文字が染みわたり活気づいた夜だった。
27鍋!

応急処置

 昨日、専務イシバシと横浜駅で夕飯を食べているときのこと。食べ終わった頃を見計らい片付けに来た店員がわたしの左膝に醤油をこぼした。店員は慌てて、「すみません! すみません!」と何度も連呼し、おしぼりで膝についた醤油を拭いてくれた。「だいじょうぶです。気にしないでください」。それで終わり、で良かったのだが、店員は片付け物をしながら上司に話したのだろう。すらりと背の高い美しい女性が、「たいへん申し訳ございませんでした。店長はただいま不在でして、わたしは副店長の**と申します。応急処置をさせてください」。「いえ、だいじょうぶです。もうほら、ほとんどわからないぐらいですから」。「いや、シミになってはいけませんから…」と、美人の副店長は、やにわにわたしのパンツの裾に右手を入れ、あろうことか、するするすると膝頭まで運んだ。そうして、左手でおしぼりを握り、ちょうど布を両手で挟む形にしてぱんぱんと丁寧に醤油のシミを拭き取ってくれた。白魚(たとえが古いか?)のような彼女の左手の指を見ているうちに、わたしは変な気持ちになってきた。「あ、あ、あの、もうけっこうですから。ありがとうございました」。「申し訳ございませんでした」と副店長はもう一度頭を下げレジのほうへ戻っていった。と、間もなくまたやってきて、「些少ですが、これでクリーニングに出してください」。「いや、いいですよ。そんな大したものでもないし。洗濯すれば落ちますから」。「当社規定ですのでお受け取りください。クリーニング代がそれ以上かかるようでしたら遠慮なくお申し付けください」。「そんなにはかかりません。そうですか。では、ありがたくいただきます」
 というような顛末。脚色なく。にしても、ああ、あの白魚のような指。たとえは古いが…。

かもめパン

 そこを通るといつもほんのり甘いパンの香りが漂ってきた。かもめパン。詳しいことは知らないが、横浜のこの地でパンを製造販売しているらしい。横浜街道沿いに小さい店があるが、1本裏手に入ると工場があって配送の車が並んでいる。小さい店は小さいながら、製造販売元のかもめパン直営だろうから出来たてほやほやのパンがいい香りを発するのもうなずける。
 井土ヶ谷の、休日、散歩がてらたまに行く寿司屋で昼食を済ませ、帰りしな、初めてかもめパンの店に入ってみた。どこといって特別な感じはないけれど、おしゃれなチェーン店のパン屋とは違う懐かしさが漂っていて心地よい。ほんのりとしたパンの香りもチェーン店とは違う。店のおばさんが客と楽しげに話しているのも、見ていてなんだかうれしくなる。メロンパンとあんドーナツを買って帰る。懐かしい味に舌鼓を打った。

仕事にありがとう

 いやだなあと思ったり、ぶつぶつ文句を言いたくなるときもあるけれど、仕事があるということはやはりありがたい。
 きのうは再校ゲラのチェックで1日が終わった。A4で約50枚。進んだほうだろう。細切れの仕事だと時間の経つのも細切れでなかなか進まないように感じるけれど、ひとつの仕事にじっくり腰を据えて取り組んでいると時間の経つのも早く感じるから不思議だ。夕刻、机を離れ軽い体操をするのもなんだか気持ちいい。

天気予報

 神奈川県の昨日の天気予報は夜になって雨。朝、出掛けに空を見るとほとんど快晴だったから、そんなことあるかいと高をくくり傘を持たずに出勤。一日の仕事が終わり、天気予報のことなどすっかり忘れて勝手口から外へ出たら雨が降っていた。天気予報も当たることがある。いま出てきた勝手口はオートロックになっていて入れないからぐるりと廻って反対の勝手口から再びビル内へ。正面玄関はすでに閉まっている。たった数分のことなのに、とても無駄な時間が流れた気になる。

S社・Y本さん

 「お世話になっております。S社のY本です」と電話口でY本さんは言う。こちらがどんなに慌てて電話し取り次いでもらっても、Y本さんは慌てず騒がず落ち着いて「お世話になっております。S社のY本です」。Y本さんは営業なので外出している時もある。そういう場合は、申し訳ないがY本さんから電話してもらうように依頼する。程なく会社の電話が鳴り、Y本さんのケータイ番号が表示され、サッと受話器を取る。Y本さんとわかっているので、「あ、Y本さん。お呼び立てしてごめんね。ちょっと急ぎで…」と話し始めるのだが、礼儀正しいY本さんはやっぱり「お世話になっております。S社のY本です」
 Y本さんは月に数度、わが社を訪れる。ドアをノックして部屋に入ってくるなりここでも「お世話になっております。S社のY本です」。仕事の打ち合わせを終えると、Y本さんはおもむろに立ち上がり社員全員に、方向を変えてちゃんと向き合い挨拶してから帰っていく。こういうY本さんだから、仕事がきちんとしており、間違いがない。

えらい!

 夕方、営業の奥山さんがツーと寄ってきた。仕事上の報告か相談事かと身構えたが、違った。曰く「『大菩薩峠』全巻読み終えました」。「そうか」。拍手ーっ!! 社員一同で。パチパチパチパチ…。『大菩薩峠』はなんといってもすごい小説なので、わたしは社員のだれかれとなく薦めてきた。が、全巻読破したのは奥山さんが二人目。えらい!「勝小吉の『夢酔独言』からの引用は19巻と20巻でした」。「そんな最後のほうだったかな。そうか」と読んだ者でなければわからない会話。勝小吉は海舟の父。中里介山は小吉の自叙伝『夢酔独言』を読み、面白いというので自分の小説の中にちゃっかり引用し紹介している。現代の感覚からすれば、あんな大量の引用って許されるのか、とも思うけれど、人間界の諸相を曲尽して、大乗遊戯の境に参入するカルマ曼陀羅の面影を大凡下の筆にうつし見んとするにあり、ということだから全てOKなのだろう。