菅江真澄

 

 奥入瀬や橡の実拾ふ子らの声

わたしがまだ高校生の時に、
江戸時代の紀行家・菅江真澄について
話してくれた国語の先生がいました。
先生の名前を失念してしまいましたが、
真澄のファンだったのか、
文章を音読してくださった後、
シーンとなった教室で、
凡そ次のようなことを話されたと記憶しています。
きみたちに今、菅江真澄の好さを判れ
と言っても無理かもしれない。
しかし、歳をとり、いろいろ経験した後で、
そういえば高校の国語の教師が菅江真澄について
なにか言っていたなーと
思い出すことがもしあったら、
そのときに真澄の文章を読んでみるといい。
きっとその好さがしみじみ判ってくるだろう…。
この連休を利用し、秋田へ帰省した折、
足を伸ばして三十数年ぶりに十和田湖を訪れました。
紅葉前のこととて、客は少なく、
しかし幻想的な湖畔のたたずまいと
奥入瀬の音と木立からもれてふりそそぐ光は
五感を通して深く染み入り、
ほうとため息の出ることしばしばでした。
二百年前、
この地へも真澄が徒歩で訪れたことを知り、
高校時代に習った先生の静かな語りを思い出しました。
秋田に帰った翌朝、
秋田魁新報に菅江真澄研究会創立三十周年の記事が
大きく取り上げられていました。
平凡社の東洋文庫に『菅江真澄遊覧記』が入っています。

 暮れ泥む秋の湖畔の乙女の像

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